(経理初心者向け)貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)って何??→わかりやすく解説します!

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こんにちは、ひめのです。

今回は「貸倒引当金」です。会計に関わっていないとなかなか目にすることがない言葉ではないかなと思います。

「貸倒引当金」は判断が伴う部分も多く、実務上は取り扱いが難しい勘定科目です。そして会計と税務で取り扱いが違う部分があり、税務上の調整項目となることも多いです。

今回はまず概略を中心に書いていきたいと思います。
ちなみに税務上の取り扱いについてはその際明示しますので、基本的に会計基準をベースに解説していると思っていただければと思います。

貸倒引当金とは??

「貸倒」とは代金が回収できないことを意味する言葉です。

「引当金」とは、将来費用や損失が発生すると見込まれる場合、当期の負担とするべき金額を費用や損失として計上することを意味する言葉です。

上記はかなり簡単に表現していますが、正式には会計基準にて引当金について定義が示されています。

<引当金>
将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。
(企業会計原則注解 注18より)

こちらの「引当金」については、また別の機会に深掘りして書きたいと思います。

以上を踏まえて、貸倒引当金の意味をわかりやすく意訳すると「売掛金や貸付金などの債権について回収できないかもしれない金額を見積もって計上し、未だ未確定となっているもの」と考えるとわかりやすいかもしれません。

貸倒引当金は処理方法が複数ありますので、そちらを次に見ていきましょう。

貸倒引当金の具体的な処理方法

貸倒引当金は貸倒見積高に基づいて算定されます。

貸倒見積高の算定にあたっては、対象となる債権(売掛金や貸付金など)を次の3つに分類します。

□ 一般債権
□ 貸倒懸念債権
□ 破産更生債権等

これら3つの分類の債権とはそれぞれ次のように説明できます。

【一般債権】
特に問題問題が起きていない債権

【貸倒懸念債権】
経営破綻の状態になっていないが、正常に回収できていない相手に対する債権

【破産更生債権等】
既に経営破綻しているか、実質的に経営破綻している相手に対する債権

次に、3つの分類それぞれに貸倒見積高の算定方法があります。

【一般債権】
貸倒実績率等の合理的な基準によって算定する

【貸倒懸念債権】
次の①か②の方法により算定する
①担保などの回収が保証されている額を差し引いて、残りの部分について債務者の状態を考慮して貸倒見積高を算定する

②貸付金など、回収と利払いのキャッシュ・フローを合理的に見積もれる債権は、その「キャッシュ・フローを約定利子率で割り引いた金額の総額」と「債権の簿価」との差額を貸倒見積高とする

【破産更生債権等】
担保などの回収が保証されている額を差し引いた残りの部分を貸倒見積高とする

上場会社などの会計実務では、上記の方法に基づいて算定するにあたって頭を悩ませることも多く、特に未回収先について債権の分類をどう取り扱うかという点と、債務者の状態を考慮した貸倒見積高をどう合理的に算出するかという点が難しい判断となることがあります。

貸倒引当金についての会計と税務の違い

中小企業では、基本的に税務会計中心ですので、税法に基づいて処理することが一般的です。

税法では、債権の種類分けは次の2つです。

①一括評価金銭債権
②個別評価金銭債権

こちらの種類分けをベースに主な違いを解説したいともいます。

まず、①の「一括評価金銭債権」は、会計上の「一般債権」に近い概念ですので処理結果も近いものになります。ただし、貸倒実績率の算出方法が会計と税務では明確に違います

貸倒実績率は貸倒損失(貸倒実績)を債権残高で割って算出しますが、それぞれ下記のように違いがあります。

会計上は、債権残高が計上されている期の翌年に発生した貸倒損失が計算上の分子となり、その3年分の平均を計算

税法上は、過去3年間の貸倒損失(及び個別評価分の調整)の平均と過去3年間の債権残高の平均で計算

また、税法では中小企業特例で「法定繰入率」を使って貸倒引当金を算出することが可能です。実績率よりもこちらの方が貸倒引当金の額が大きくなるのであれば、こちらを選択しても良いという制度になっています。

次に②の「個別評価金銭債権」についてですが、会計上の「貸倒懸念債権」と「破産更生債権等」がこちらの概念に近いといえます。

しかし、税法上の個別評価金銭債権は、その債権に対して貸倒引当金を計上するためには厳格な要件を満たしていなければなりませんが、会計上では様々な要素を勘案して引当金を計上するべきであると判断する場合は合理的な見積額で貸倒引当金を計上します。

したがって、税法上は会計上の貸倒引当金を計上する範囲よりも狭くなることが多いと考えられます。

この他にも会計と税務では違う部分がいくつもあり、上場会社等で会計基準に準拠して会計処理している会社では、税務申告の調整項目が多くなりますので、実務上注意しなければならない点が多いことを認識していただければと思います。