新入社員に伝えたい。。。必ず抑えて欲しい経理実務のポイント(残高のチェック)

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こんにちは、ひめのです。

経理の実務は、ただ簿記や会計の知識があるだけでは務まりません。経理の業務をより質の高いものにするための、抑えておくべき実務上の様々なポイントがあります。

今回はそのポイントの一つである「残高のチェック」について書きたいと思います。

必ず抑えて欲しい経理実務のポイント「残高のチェック」とは?

経理実務の中で、必ずやってもらいたいことは「残高のチェック」です。

残高のチェックとは「BS(貸借対照表)の計上額があるべき金額となっているかどうかをチェックすること」です。

経理の実務では日々の取引について会計処理(仕訳を起票)していきますが、複式簿記ですので借方と貸方双方に勘定科目と共に金額が記帳されていきます。

そして、計上パターンは3つです。

《メリット》
①借方貸方の一方がBS(貸借対照表)科目でもう一方がPL(損益計算書)科目
②貸借どちらともBS(貸借対照表)科目
③貸借どちらともPL(損益計算書)科目

③のPL(損益計算書)科目同士となるケースは、日常の取引仕訳ではあまりないと思いますので、主に①と②の仕訳で試算表が構成されていきます。

したがって、これら多数の仕訳処理がされると何らかのBS(貸借対照表)科目に仕訳が蓄積されていきますので、できあがったBS(貸借対照表)の残高があるべき数字になっているかどうかをチェックすることにより、包括的に仕訳処理の誤りや漏れなどを発見することができます。

実務をするとわかると思いますが、実際に仕訳入力を行っている際は、処理量も多くなるので一つ一つ時間をかけることができなくなり、視野が狭くなっていたり思考が固まってしまったりした状態で作業していることも少なくありません。

その状態で、自分の行った作業をなぞるようなチェックをしても同じ思考のまま見ていることになりますので、誤りを発見できないことが想定されます。

そのようなことを防ぐためにも、全く違った角度から残高チェックをすることにより見落としがちなミスを効率的に見つけることができ、結果として効果的なチェック作業が行えます。

「残高のチェック」の具体的なチェック方法と確認できる内容について解説します!

前段で「残高チェックは計上漏れや計上誤りを発見するのに効果的である」という説明をしました。

次に、具体的なチェック方法とそのチェックで確認できる事象について、主な勘定科目を例に解説したいと思います。

主な科目ごとに表をまとめましたので下記をご覧ください。

勘定科目名 主なチェック方法 一致等していない場合に
想定される事象
現金及び預金 残高が預金通帳や残高証明の金額との一致を確認する (預金残高が一致しない)
・仕訳の計上漏れ
・計上金額誤り
・補助科目選択ミス
など
売掛金 補助科目ごとに、入金サイトと整合した残高となっているか確認する。または債権管理表との一致を確認する (金額が整合しない)
・補助科目選択ミス
・計上金額誤り
・入金漏れ、過入金
など
前払費用 各項目ごとに計算上のあるべき金額との一致を確認する (残高が一致しない)
・費用化の計上もれ
・補助科目選択ミス
など

有形

無形固定資産

固定資産台帳との一致を確認する (残高が一致しない)
・減価償却費の計上漏れ
・徐売却の処理漏れ、誤り
・消費税の処理誤り
など

買掛金

未払金

補助科目ごとに、支払サイトと整合した残高となっているか確認する。 (金額が整合しない)
・補助科目選択ミス
・計上金額誤り
・支払漏れ、過払い
借入金 返済予定表や残高証明の金額との一致を確認する (残高が一致しない)
・利息と元本の計上誤り
・補助科目選択ミス
賞与引当金 計上すべき要支給額の金額との一致を確認する (残高が一致しない)
・計上漏れ
など

このように、残高をチェックすることで処理上の誤りや漏れが発見されるだけでなく、ビジネス上の大事な業務である売掛金の回収や買掛金等の支払の遅延なども事後的に発見することが可能となります。

現金及び預金に関しては、仕訳入力後にBS(貸借対照表)の現金預金残高を通帳等と一致しているかを確かめていないのは論外と言えるほど基本中の基本です。

売掛金に関しては、例えば末締め翌末入金期限としている場合、正常に回収できているのであれば期末の売掛金は期末に計上した売掛金だけが残るはずです。

また、そもそも取引先別に入金管理を実務上行っていなければ、残高の確からしさの確認が煩雑になってしまいます。

普段から売掛金の入金管理は行うことは経理実務以前にビジネスの基本と言えます。

その他の勘定科目も含めて、残高のチェックの基本は「帳簿外の信頼できる資料」と照合して計上された残高の正しさを確かめます。

通帳・残高証明書や借入金の返済予定表等は会社外で記録されている資料ですので信頼性が高いです。
一方、売掛金の入金管理や前払費用の費用化のための管理などは、会社内部で管理資料を作成しています。

内部管理資料がしっかりしていないと、残高チェックに時間を要したり帳簿自体の正確性を確かめられなかったりします

そして、特に外部に対して決算を提示するような場合、会社の管理能力が低いと帳簿自体の信頼性にも疑義が生じかねませんので、取引の内容や勘定科目に応じて、適切な数字の管理が実務上大切になってきます。

残高チェックは質の高い経理実務を行う上での基本であり、これを疎かにしているということは経理実務の本質を理解していないと言われても仕方がないかもしれません。