(経理初心者向け) 建設業会計って何ですか?? →わかりやすく解説します!

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こんにちは、ひめのです。
建設業においては、一般の会計とは少し違う取り扱いをした建設業会計を適用しています。

基本的には会計基準は同じですが、建設業の特徴を踏まえた特殊な勘定科目会計処理が存在していますので、今回は建設業会計について解説したいと思います。

建設業会計って何ですか??

ざっくり言うと、基本的には製造業の工業簿記に近い方法により処理します。

建設業会計には以下のような特殊な勘定科目を使用します。

完成工事高
・・・建設業における売上高をこの科目で計上します。

完成工事未収入金
・・・建設業における売掛金をこの科目で計上します。

未成工事支出金
・・・製造業でいう仕掛品に相当する科目です。

工事未払金
・・・建設業における買掛金をこの科目で計上します。

未成工事受入金
・・・建設業における前受金をこの科目で計上します。

このように、勘定科目は建設業の特徴に合わせた名称となっています。

特に建設業の場合は完成まで期間が長く、かつ金額が高額になることが多いので、着手金、中間金といった前受金を受け取るケースがあります。

したがって未成工事受入金は比較的使う頻度が多いように思います。

つぎに、具体的な経理実務について見ていきましょう。

建設業における原価計算

建設業における原価計算は「個別原価計算」を採用しているところが多いです。

建設業では一つの案件の規模が大きいため、工事案件ごとに原価を集計していきます。

例えば、建物を建てる建設工事があったとします。

その建設プロジェクトに対して工事番号を設定して、かかった材料費、労務費、経費について、対応する工事ごとに工事番号を付して集計します。

また、直接的に工事に割り当てられない経費については、間接費として一定の基準で配賦して、最終的に工事ごとに原価を割り振ります。

企業によって様々ですが、会計処理上、完成工事原価としての各費目(材料費労務費等)と未成工事支出金としての各費目(材料費労務費等)を勘定科目としてそれぞれ保持して、完成工事高を計上するタイミングで振り替える等していくことになります。

上場会社等になってくると、案件数も多く会計システム内では対応しきれませんので、案件管理については別途専用のシステムを利用し、ある程度の塊ごとに計上するケースも少なくありません。

具体的な会計処理

具体的な会計処理の一例を紹介します。

【設定】
・受注高:10,000,000円(うち中間金5,000,000円を後期の途中で受け取る)
・原価は3,000,000円かかった

①材料費、労務費、経費の計上

未成工事支出金(材料費) 1,000,000円 /工事未払金 1,000,000円
未成工事支出金(労務費) 1,000,000円 /工事未払金 1,000,000円
未成工事支出金(諸経費) 1,000,000円 /工事未払金 1,000,000円

②中間金受け取り時の計上

現金預金 5,000,000円 /未成工事受入金 5,000,000円

③完成工事高の計上

完成工事未収入金 10,000,000円 /完成工事高 10,000,000円

④未成工事受入金の振替

未成工事受入金 5,000,000円 /完成工事未収入金 5,000,000円

⑤完成工事原価の計上

完成工事原価(材料費) 1,000,000円 /未成工事支出金(材料費) 1,000,000円
完成工事原価(労務費) 1,000,000円 /未成工事支出金(労務費) 1,000,000円
完成工事原価(諸経費) 1,000,000円 /未成工事支出金(諸経費) 1,000,000円

あとがき

建設業の会計では、完成工事基準工事進行基準2種類の基準があります(建設業だけが適用するわけではありませんが)。

完成工事基準は工事の完成時に売上高を計上する方法であり、工事進行基準は工事の進捗に応じて売上高を見積計上する方法です。

どちらも売上高の計上タイミングでそれぞれ原価も計上します。

これら計上基準は「企業会計基準第15号 工事契約に関する会計基準」に詳しく記載されていますが、「企業会計基準第29号(2018年3月30日公表、2020年3月31日改正)」の適用により廃止されますので詳しい解説は割愛します。

ちなみに企業会計基準第29号は収益認識に関する会計基準です。

こちらの収益認識(売上計上基準)についてはIFRSのコンバージェンスの一環として公表された基準となっていますので、機会を見て別途解説ブログを書きたいと思います。

以上が、建設業会計に関する解説でした。

商業簿記は知っていても建設業に転職したら「勝手が違う」なんてことも良くありますので、ざっくりとでも一般的な会計との違いが頭に入っていると混乱しないで済むかなと思います。