資金繰りと損益は一元管理できない!? 実現が難しい2つの理由とは??

こんにちは、ひめのです。
資金繰り損益も、元を辿れば同じ数値情報を利用してそれぞれ必要な情報となり管理されます。

源泉が同じ数値ではあるものの、実務上は資金繰りと損益を一元管理しようとすることが難しいのが現実であり、それを実現するためには一筋縄ではいかず、場合によっては業務フローそのものまでも改変する必要も出てきます。

そこで今回は、資金繰りと損益の一元管理を実現することが難しい理由について書きたいと思います。

資金繰りと損益の一元管理を実現することが難しい理由

資金繰りと損益の一元管理を実現することが難しい最大の理由は「管理の時間軸が違う」ことにあります。

では、管理の時間軸が違うということとはどういうことでしょうか。

資金繰りの管理

資金繰りの管理は、今ある資金が今後どのように増減していくかを予測し管理していくことです。

つまり管理の時間軸は「現在から未来」に向かっているといえます。

手元の資金を上手に使っていかなければ、いくら利益の出る仕事を請け負っていても、資金ショートしてしまう恐れがあり、結果として倒産の危機に陥ってしまいます。

そして、事業をさらに成長させるための様々な投資(人の採用や物的投資)時期はいつが適切か、ということも資金繰りを管理しなければ把握することはできません。

損益の管理

損益の管理は、自ら行なった事業の成果がどの程度かを把握し、利益が出るよう管理していくことです。

つまり管理の時間軸は「過去から現在」となっているといえます。

売上から原価、経費を差し引いで利益を算出し、事業を行った結果として儲かったかどうかを確認するために、全社ベースのみならず商品別や部門別等で細分化して管理することで、どこに事業上の問題があるかを把握します。

そして、そうした情報が全体的に利益をいかに出すかの対策を考える土台となることとなります。

資金繰りと損益の管理は利用目的も違う

管理目的の点でいうと、資金繰りの管理目的は事業の維持・成長にフォーカスしているのに対し、損益の管理は事業を行った結果の可視化と事後の分析にフォーカスしていると言っても良いかと思います。

それぞれ似たような数値を扱いながらも、管理目的も明確に違っており、むしろここを混同してしまっては適切な経営管理は実現できません。

なぜなら、損益はあくまでも事象の発生時点で認識するのに対し資金繰りは資金が動くタイミングで認識しますので、これらは常に同じタイミングで認識できる数値ではなく、月次や1事業年度で区切った時の集計数値は違ったものになるのが通常です。

他にも、資金繰りは消費税込みで考えつつ、実際の納税タイミングも把握する必要があるるのに対し、損益は税抜で考えて納税時期は考える必要がない点でも違いがあります。

また、資金繰りは財務管理とも言ったりしますが、その名の通り、自社の金銭的な財産を管理することに他なりません。

保有する資金の量を把握し、今後どのような入金や出金があることを可視化しておくことは、経営を行う上で心理的な面でも安心材料となります。

別管理はある程度仕方がない」と許容することが重要

以上のように、資金繰りと損益の管理はそれぞれ時間軸管理目的が違うことが要因で一元管理することが難しい管理となっています。

したがって、そのような違いがあるにもかかわらず、無理に一元管理を実現しようとしても中々うまくいかないのが現実です。

世の中に存在している会計ソフトで可能ではないかとの異論があるかもしれませんが、私は完全に管理することは現状難しいと考えています。

会計ソフトは損益を管理することには向いていますが、資金繰りの管理には向いていません

会計ソフトは会計帳簿を作成し決算書を作成するために利用されますので、会計基準等に基づいた事実のみが記録されるべきものです。

一方、先ほども書きましたが、資金繰りの管理は時間軸が「現在から未来」に向かっており、ある程度未確定な要素も含んで記録集計したものを管理対象としています。

そのような不確実性が高い情報までも会計ソフトの中に記録してしまうと、会計ソフトの本来の利用目的である決算書の作成にあたっての正確性に支障をきたす可能性が出てしまいます。

また、資金繰りの管理・予測は直近から1年以上先まで可視化することもあり、その点を踏まえると会計ソフトでは主に1事業年度ごとに区切られてしまっているため、複数年や任意の月を軸にした長期間の推移を確認することが難しくなります。

余談ですが、損益の管理についても、経営管理上必要な粒度で管理しようとすると、むしろ会計ソフトの外の別の管理システムにより管理する方が効率的で管理目的に合致した情報を得られることも考えられます。

以上のことから、無理に一元管理しようとするのではなく、それぞれの管理目的を明確にして「目的に合致した情報をいかに適切に把握できるか」という点を重視し、ある程度別管理を許容した管理方法を模索する必要があるといえます。

まとめ

事業を取り巻く「数字」と一言で言っても、「資金繰り」であったり「損益」であったりと同じ数字でも全くの別物が存在していることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

「事業上管理する数字」=「会計や財務」は奥が深く簡単なことではありません。

無理に一元管理しようとしたり効率性を極端に重視したりする人ほど、「会計や財務」のことを理解せず結果としてお金の管理を疎かにしている傾向にあるように思います。

リスクが顕在化しない限り、「事業上管理する数字」=「会計や財務」の管理について大切さを身をもって実感することはなかなか難しいかもしれませんが、リスクが顕在化しやすくなっている昨今の事業環境だからこそ、今一度「数字」の管理方法について向き合って考えてみてはいかがでしょうか。