(業種別経理実務のポイント)専門商社の経理実務とは?→わかりやすく解説します!

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こんにちは、ひめのです。
経理実務と一言で言っても、業種によってその特徴を踏まえて留意する部分や論点となるところは変わってきます。

そこが知識だけでは実務が行えない点の一つであるとも言えますので、今回は業種別の経理実務のポイントとして「専門商社」の経理実務について解説したいと思います。

専門商社の特徴

専門商社とは、ある特定の分野の商材を調達して得意先に提供する業種です。

電子部品食品など各種分野に特化した卸売業という感じです。

専門商社について整理すると、次のような会計上の特徴があると思います。

■売上高が大きく粗利率が低め
■在庫(棚卸資産)が多い
■人件費の比率が高い
■輸出入が絡むことも多い
など

大量に物を仕入れて販売するビジネスですので、売上高が大きくなる傾向があると同時に、大量販売により利益を得ますので、粗利率は低めに出ることが多い印象です。

同時に、安定供給のために在庫をある程度抱えておく必要があるのも特徴です。

また、基本的には人材のほとんどは営業担当とオペレーションを担う人で構成され、他に特別なことをしていなければ販管費のほとんどは人件費等で占められ、固定資産を利用したビジネスというよりは人材が重要なビジネスであると言えます。

その他、輸出入が絡むことも多く貿易事務が発生しますので、国内販売だけでは出てこない特別な対応が必要になる場合があります。

専門商社の経理実務

商品を仕入れて保有し、得意先の求めに応じて商品を販売するという、取引の流れとしてはシンプルです。

いわゆる商業簿記の基本のような処理になり、決算書の構成としては次のようになります。

□売上高
□期首棚卸高
□仕入高
□期末棚卸高
 ■売上総利益
□販管費
 ■営業利益

決算書としてはシンプルで、簿記の勉強をしたときに出てくるような表示になるかと思いますが、会計上の論点や財務上の論点がいくつかあります。

会計上の論点

輸出入がある場合

売上や仕入は貿易基準で計上することになります。

詳しくは割愛しますが、貿易条件により計上タイミングが変わりますので、一般的にはインコタームズを参考にして会計処理をすることになります。

したがって、貿易条件が何かを取引契約の中に入っていないと会計処理に困ってしまいます。

在庫管理と評価

それなりの在庫数を抱えるビジネスですので、経営的にも会計的にも在庫管理は重要です。

在庫が多すぎると資金を圧迫してしまいますが、少なすぎると販売したい時に商品がない可能性が高まり、場合によっては売上の機会を逃してしまいます。

様々な世界情勢により一時的に品薄になることもありますので、安定した供給を実現するためには、それらの動向を注視して適切な在庫を確保しておくことが求められます。

一方で、会計上は在庫が多いと棚卸資産の評価損の検討が重要性を増してきます。

長期間変動がない在庫は販売可能性があるのかどうかや、商品の価値自体陳腐化していないかどうかなど、様々な視点での評価が必要です。

在庫金額は利益に直結しますので、この判断を謝ると大きく利益が変動することになります。

直送案件の管理

かなりの数の商品を頻繁に動かしますので、仕入れ先から得意先へ直送することも多いのがこの業種の特徴です。

したがって、自社在庫が仕入れ先にある場合や外部倉庫を利用する場合に、商品の出荷管理などをいかに適切に行えるかは重要です。

全て把握できていないと売り上げの計上漏れがあったり、逆に過大に計上してしまう恐れもありますので、この辺りのオペレーションはしっかり整備するべきところではないかと思います。

財務上の論点

借り入れが多い

商品の調達が先行するので資金の借り入れは常に必要となってきます。

資金調達コストと粗利との兼ね合いを注視して、全体として利益が出るように金融機関との取引も重要になってくるほか、長期的な借入以外にも急に大量の仕入れが必要になった時に対応できるよう、機動的に資金調達できるよう予め金融機関と契約することも必要になってきます。

為替の影響やその管理

輸出入があると為替変動の影響を受けます。

為替の変動はコントロールが難しいですが、なるべく為替変動リスクを軽減するための対策は必要です。

為替で損するとか得するとかではなく、なるべく業績の予測可能性を高めるために、変動幅を抑えることを目的として対策します。

為替の変動の影響を減らすために金融取引で為替ヘッジをしたり借り入れの一部を外貨建てにしたりして、外貨建ての債権債務のバランスをとるよう調整するよう努めます。

あとがき

以上が専門商社の特徴を踏まえた経理実務のポイントでした。

借り入れとセットで考えなければならない点や輸出入による為替変動リスクへの対応などがありますので、財務部門の管理体制は通常よりも重要度が高いように思います。

そして、なんといっても在庫管理をいかに適切に行うかが経営においても経理実務においてもポイントになるのではないかと思います。