中小企業にこそ「管理会計」が必要である、たった1つの理由とは??

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会計には「財務会計」と「管理会計」の2種類あると以前のブログで解説しました。今回は、そのうちの「管理会計」は、中小企業にこそ必要である理由について書きたいと思います。

中小企業にこそ「管理会計」が必要であるたった1つの理由

中小企業にこそ「管理会計」が重要であるたった一つの理由、それは中小企業の会計実務は「税務会計」中心となってしまっているからです。

「税務会計」とは正しい言葉ではありませんが、実務上の慣習を踏まえて良くこの言葉が使われています。

「税務会計」とは何を指しているか

制度上必要とされる会計は「財務会計」と総称されますが、金融商品取引法・会社法・税法とそれぞれ根拠となる法令があり、一般的には中小企業では会社法と税法が準拠しなければならない法令となります。

ただし中小企業はほとんどの場合株主と経営者が一致していることが多く、株主との利害調整が実質的に不要ということもあり、会社法を特別意識している企業は少ないと思います。

一方で、全ての中小企業が直面するのが税務申告となりますので、必然的に税法を意識した会計処理が中心となってしまっています。

もちろん、税法上は株主総会への報告又は承認を経た決算数値を基に加減算調整して所得計算を行う「確定決算主義」をとっていますので、基本的には財務会計と一体化されているわけですが、中小企業においては税務中心の会計となっているため、申告上で加減算するような調整項目がほとんどないよう、会計処理上で税法上のルールを適用しています。

これが「税務会計」と言われる所以です。

「税務会計」中心では経営のための情報は得られない

「税務会計」では、企業の事業活動とは無関係に税法上決められた特例やルールがありますので、「税務会計」中心の会計数値は必ずしも正しくその企業の財産や経営成績を表していません

そのため、「税務会計」で作られた試算表を真面目に分析したとしても除外しなければならない要素がいくつか含まれてしまっているので、その部分を理解して考慮した上で活用しなければなりません。

つまり、中小企業では通常作られる会計数値が「税務会計」となってしまっているからこそ、経営や事業のために会計数値を活用するには別途「管理会計」の活用が必要となってくるというわけです。

具体的には、固定資産の特別償却一括償却資産の他、節税目的で(認められる範囲で)の多額の支出も費用として計上されてくると、経営の実態との乖離が大きくなってしまいます。

逆に、だったら企業会計基準に準拠した会計処理をして税務調整をすれば良いのでは?と思うかもしれませんが、税法上の中小企業特有の特例を適用するためには損金経理が要件となっているものも多いため、特例を適用するためには会計処理の段階から税務会計とせざるを得ないという事情もあります。

そういった意味でも、中小企業経営においては制度会計から独立した「管理会計」の活用が必須項目であるといえます。

「管理会計」をサポートできる会計事務所は少ない

自社で管理会計を取り入れようと考えたとしても知識や経験がなければ中々実践することは難しいため、会計事務所からのサポートを期待することが想定されます。

実際、中小企業では会計事務所と顧問契約を締結し、日々の実務のサポートから税務申告業務までをお願いしているケースはよくあることと思います。

ただし、これら会計事務所との顧問契約においては、税務に関することが中心である場合が多く、その延長線には「税務会計」が基本的にベースとなってきます。

したがって会計事務所にいる人材は、税務実務や税務会計に長けている人がいても「管理会計」を体型的に学んで実際の実務で活用したり支援したりしてきた人材が少ないのが現状です。

一括りに会計といっても「管理会計」は「財務会計(税務会計)」とは別物で、「管理会計」は「財務会計」のように明確なルールはなく、経営の意思決定のために企業の実情に合わせて自由に扱うものとなっているため、「管理会計」の知識もさることながら実際に経営上どのように活していくべきかという検討と判断が伴い、実務経験も大事な要素となります。

会計事務所として経営の相談を受けるとするならば、それは他社事例を紹介するか、経営にどう会計を活かしていけばいいかという点に絞られると思います。

後者のニーズに対しては、経営に活かすための会計である「管理会計」がわかっていないと応えることができないため、会計事務所としては「なんちゃって」ではなくちゃんと「管理会計」を理解した人材が必要となってくると思われます。

ちなみに、別のブログで「中小企業経営において「資金繰り」の管理を最優先すべき理由とは」というブログも書いていますので、そちらも併せて見ていただけると嬉しいです。