(経理初心者向け)減損会計って何??→わかりやすく解説します!

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こんにちは、ひめのです。

今回は企業会計では常に論点となる「減損会計」について、その入門編となる概要について書きたいと思います。後半では上場企業の有価証券報告書からいくつか事例を紹介しています。

減損会計って何?

減損会計については、次の二つの基準が根拠となります。

■企業会計審議会「固定資産の減損に係る会計基準」
■企業会計基準適用指針第 6 号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」

実務に携わる人は最終的には基準を読んで理解する必要があると思いますが、その前段階として減損会計とはどういうものかという概要について、簡単にわかるよう解説したいと思います。

減損会計とは、資産の部に計上されている固定資産について、その資産の収益性が低下したことにより、将来の投資回収が見込めなくなった場合に、回収可能価額までその固定資産を減額し差額を損失として計上する会計処理のことを指します。

固定資産には、建物や設備などの有形固定資産のほか、ソフトウェアやのれんなどの無形固定資産も含まれますので、それらすべてが減損会計の対象となります。

減損会計が必要となる状況をもう少しわかりやすく説明すると、例えばスーパーやドラッグストアなどの多店舗経営をしている場合において、ある店舗の収益性が低下した場合や閉店を意思決定したことにより、将来その店舗に投下した固定資産の回収が見込めなくなった場合が該当します。

減損会計は、いくつかの段階を経て損失額を計上します。その減損損失の流れは大まかに次のようになっています。

①資産のグルーピング
資産を、キャッシュフローを生み出す最小単位にグルーピングします。店舗単位や事業単位でグルーピングするようなイメージです。

②減損の兆候の把握
減損の兆候を把握します。資産グループに減損が生じているかもしれないことを示す事象のことです。

会計基準では、以下の場合を減損の兆候がある事象として例示しています。
 ■営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合
 ■使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合
 ■経営環境の著しい悪化の場合
 ■市場価格の著しい下落の場合

③減損損失の認識の判定
該当する資産グループから生み出される割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較し、帳簿価額が下回っている場合には減損損失を認識します。

④減損損失の測定
減損損失が認識された資産グループの帳簿価額を回収可能価額まで減額するとともに、その差額を損失として当期のPLに計上します。
ちなみに回収可能価額とは使用価値と正味売却価額のいずれか高い方の金額とされていますが、この点の説明は長くなるので今回は割愛します。

以上のような流れで減損損失を認識し、損失を計上することとなります。

この減損損失は税務上に比べて会計上の方が早い段階で損失を認識するため、多くの場合は税務調整の対象になると思われます。

減損損失を計上している最近の事例

具体例として、最近で公表されている有価証券報告書の中から、いくつか事例を見ていきたいと思います。

①東京地下鉄株式会社

みなさんご存知の東京メトロを運営している会社です。
2021年3月期の連結損益計算書において、1,614百万円の減損損失を計上しています。
減損損失を認識した資産は、収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった賃貸物件4件と、除却の決定した遊休資産7件となっています。

(参照:東京地下鉄株式会社 有価証券報告書の経理の状況より)

②青山商事株式会社

こちらも、みなさんよく知っている「洋服の青山」を運営している会社です。
2021年3月期の連結損益計算書において、10,692百万円の減損損失を計上しています。
減損損失を認識した資産は、営業店舗、賃貸用資産、カジュアル事業の事業用資産等となっており、競争の激化、賃料相場の低下等により収益性の低下している物件及び事業撤退を意思決定したことに伴い損失を計上しています。

(参照:青山商事株式会社 有価証券報告書の経理の状況より)

③ANAホールディングス株式会社

こちらも良く知っている航空会社です。
2021年3月期の連結損益計算書において、4,231百万円の減損損失を計上しています。
ちなみに2020年3月期は25,159百万円の減損損失を計上しています。
前年度については、売却予定資産についての損失計上と、連結子会社ののれんについて超過収益力が見込めなくなったことによる損失の計上がありました。
当年度については、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う航空旅客需要の大幅な減少に対応するための対応策の一つとして、一部の航空機や施設の売却を決定したことによる売却予定資産について、回収可能価額まで減額したことによる減損損失の計上が多くを占めています。

(参照:ANAホールディングス株式会社 有価証券報告書の経理の状況より)

以上、3社を例に上げて紹介してみました
(特に選定に意味はないです。たまたま目についたところを選んでみました)。

他にも減損損失を計上している企業はありますので、興味のある方は色々な有価証券報告書を見てみると勉強になると思います。

どの会社も、事業の状況に合わせて収益性の低下に伴い固定資産を減損しています。

有価証券報告書からすべて直接読み取れるわけではありませんが、昨今ではコロナ禍の影響で事業転換等の意思決定をしたことによる減損損失を計上している企業も多いのではないかと推察できます。

有価証券報告書は誰でも閲覧できるものですので、インターネットから自由に検索してみてはいかがでしょうか。