(経理実務のポイント)こんな仕訳は見たくない!?やってほしくない仕訳の入れ方10選【後半】

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こんにちは、ひめのです。
先日に引き続き「こんな仕訳の入れ方はしてほしくない」という具体的な事例10項目について後半の5選を紹介したいと思います。

(経理実務のポイント)こんな仕訳は見たくない!?やってほしくない仕訳の入れ方10選【後半】

その6 補助科目が適切に設定されていない

BS残高をチェックする際や、PL科目の推移をチェックする際、各勘定科目に適切に補助科目が設定されていないと、チェックに膨大な時間を要します。

たとえば売掛金の残高が正しい残高となっているかどうか確認する上では、まず最低限取引先別に補助科目で整理されていることが必要です。

取引先別に確認できないと、処理誤りや長期滞留債権を把握するのが容易ではなくなります。

また、税務申告書の別表や科目内訳、計算書類の注記情報において利用する数値は多々あります。

それら書類を作成するにあたり、必要とする数値をすぐに拾えるように仕訳入力段階から意識して整理をしておくことが全体として業務の効率化につながります。

これには、経理実務全体がどのような流れになっており、どのような業務が必要かということを知り理解していなければできないことです。

その7 勘定科目の選択に一貫性がない

事業年度や月次で勘定科目の選択に一貫性がない場合、科目のチェックのみならず比較分析に困ってしまいます。

同じ取引であるにもかかわらず、たとえばあるときは「支払手数料」で処理し、あるときは「支払報酬」で処理すると、前期比較分析などでいびつな結果が出てしまいます。

また、固定費などは年間で発生すべき金額があらかじめ把握できるものもありますので、その理論値と実際の計上額との比較で計上漏れや計上誤りを発見することもありますが、毎回勘定科目が変わっているとそういったチェックが機能しないことも考えられます。

その8 発生主義と現金主義が混同している

その7と似たような内容ですが、同じ取引で「あるときは現金主義」で計上し「あるときは発生主義」で計上するような実務を行なっていると、一貫性がなくなってしまい月次の推移がいびつになってしまいます。

原則は発生主義で処理しますが、重要性がない場合年度末のみ発生主義で処理することも場合によってはあり得ます。

実務の煩雑さを軽減するために現金主義であえて処理することがあったとしても、その処理ルールが明確にされ適切に運用されていないとするならば、逆に実務を煩雑にしてしまっている恐れもあります。

目先のめんどくささを解消することを優先して経理業務全体としての最適化ができていないということは、良くある話ではないでしょうか。

その9 洗替計上ではなく、差額計上している

決算整理仕訳においては、決算期末特有のさまざまな一時的な処理を行います(貸倒引当金、評価損の計上、期ズレ売上高の計上など)。

決算期末における見積もり計上に多く見られることですが、これらは翌期には戻し入れて正しい金額を計上し直すことや、次の期末で新たに見積もりしなおした金額を計上する性質があります。

この処理について、翌期の再計上する際に前期末で決算仕訳を行なった金額との差額のみを計上するパターンがありますが、個人的には全額洗替して正しい金額を再計上する方法が望ましいと考えています。

理由は簡単で、洗替の方が仕訳を見た時に修正すべき金額と正しい金額が総額としてすぐわかるので、内容を理解しやすいからです。

具体的な処理事例(3月決算)
(15日締め請求の売上高について期末までの16日〜31日分を計上する場合)

売上高 3月16日〜31日 100
売上高 3月16日〜4月15日 300
(請求額)

【差額計上】
×1年末
売掛金100/売上高100(15日分計上)

×2年初月
売掛金200/売上高200(4月以降分計上)

【洗替計上】
×1年末
売掛金100/売上高100(15日分計上)

×2年初月
売上高100/売掛金100(前期末仕訳の戻し)
売掛金300/売上高300(4月15日締め請求額の全額を計上)

洗替計上した方が、請求額自体を計上することになるので、後の入金との付き合わせ等でわかりやすくなります。

その10 とりあえず入力したいがために相手科目を適当に入力している

仕訳の入力は必ず貸借両方に科目と数値が入っていないと成立しません

特に会計ソフトを利用する場合は、貸借が一致していないと登録ができない仕様になっているのがほとんどです。

したがって、片方の科目の判断がつかなくてもとりあえず入力してしまいたいがために「適当な科目で一旦処理しておこう」という判断をしている担当者もいます。

「PLだけとりあえず早く見たい」「預金だけ合わせたい」となるケースがありがちな例です。

相手の科目がまだ判断つかない時に適当に処理してしまうと、その後埋もれてしまい本来処理すべきではない科目で処理したまま決算を迎えてしまう可能性もあります。

PLを早く見たいからといって相手のBS科目を適当に処理すると後の残高のチェックに負荷がかかります。

預金だけ先に合わせたいからといって、適当なPL科目にしてしまい段階利益が間違ってしまうことや、仮の科目で処理して放置していたことにより適切に損益が反映されていなかったということも起こり得ます。

したがって、疑問はなるべくその場で解消し積み残しがある状態の仕訳を入れないよう気をつける必要があります。

まとめ

2日分のブログでまとめましたが、以上が「こんな仕訳は見たくない!?やってほしくない仕訳の入れ方10選」でした。

仕訳入力をただの事務作業と捉えていると見たくない仕訳が大量に発生することになりますので、そのようなことにならないよう、注意して仕訳処理を行うことが求められます。

簡単な仕訳ももちろんあり、それに時間をかける必要は当然ありませんが、簡単かどうかも含めて取引に応じて処理方法を検討し慎重に丁寧な対応をすることが大切です。

また、これらの点を安易に考えていると会計の自動化をしたとしても前提となる設定でつまずいてしまい効率化は望めません。

そして経理実務においては、仕訳処理では常に自分以外の誰かが仕訳を見ることを前提とした実務の構築をしていかなければならないため、どんなITツールを使おうとも仕訳に関わる部分は一定以上の知識や実務経験が必要であるといえます。