(経理初心者向け) 前払費用と棚卸資産、似ているところと異なるところを解説します!

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こんにちは、ひめのです。
勘定科目の「前払費用」と「棚卸資産」はそれぞれどのような場合に使用するかは簿記を勉強すれば定義されていると思いますので、その通りに会計処理している方は多いと思います。

しかし、杓子定規に適用するのではなく、本質を知るところから入っていくと理解が深まり、どっちか判断できない場合などで役に立ちます。

そこで今回は少し違った角度から各科目について解説したいと思います。

前払費用と棚卸資産、似ているところと異なるところ

似ているところ

「前払費用」と「棚卸資産」は同じような性質を持っているところがあります。

それは、「将来費用として計上される(費用に振り替えられる)科目」であるというところです。

前払費用は「支払っているものの、未だサービスの提供等を受けていない将来の費用」であり、費消した時点で費用に振り替えます。

例としては、来月分の家賃の支払いや、年間保険料の前払いがこれにあたります。
(以前ブログも参照ください)

棚卸資産は、商品や仕掛品等の総称で、商品を仕入れたり外注費が発生したりしているものの、未だ販売していない又は完成していない等により売上原価から減額して棚卸資産として計上するものです。
(以前ブログも参照ください)

したがって、2つの勘定科目は将来に繰り延べられた費用であると言えます。

異なるところ

では異なる性質はどこにあるでしょうか。

「前払費用」と「棚卸資産」の性質で異なる部分は、「費消」しているか否かという点で異なります。

前払費用は、単にお金を払っただけでそのサービスを受けていない状態ですので、未だ「費消」していません

一方で棚卸資産は、既にサービスの提供を受けていたりモノを購入したりした状態ですので、既に「費消」しています

前払費用は期間損益のための経過勘定としての意味合いで計上されますが、棚卸資産については期間損益のためもありますが、財産として資産に計上するという意味合いも強い科目です。

ちなみに、資産性という点でもこの性質が影響します。

財務デューデリジェンスを行う際の資産価値の判断ではそれぞれの性質を踏まえて判断することになりますが、棚卸資産については、そのものの価値を測り「販売可能か」「売却価値はあるか」といった観点で判断します。

一方前払費用については、それ自体価値のあるモノではありませんので、返金の可能性があるかどうか等により判断することになり、その結果、価値あるものとして評価しない場合も多いです。

消費税の課税について考える

つぎに双方の消費税の取り扱いについて見ていきましょう。

消費税の取り扱いについて見てみると、「前払費用」と「棚卸資産」の性質が垣間見えます

消費税の課税資産の譲渡等や課税仕入れの時期は、原則として資産の引渡しやサービスの提供があった時とされています(国税庁HPより)。

したがって、前払費用の場合は支払った時点では資産の引き渡しやサービスの提供を受けていませんので、費用として振り替えた時点で課税仕入れとするのが原則です。

例外として、短期前払費用に該当する場合は損金に算入することが認められていますので、支払った課税期間で課税仕入れとすることができます。

棚卸資産の場合は、既に商品の仕入れにより引き渡しを受けていたり外注サービスの提供を受けていたりしていますので、発生したタイミングで課税仕入れとするのが原則です。

ちなみに棚卸資産の消費税の取り扱いについては特例が複数ありますが、今回は割愛します。

このように、消費税の取り扱いを見てみると、それぞれの異なる部分がその取り扱いに現れているといえます。

あとがき

以上が、「前払費用」と「棚卸資産」の似ているところと異なるところの解説でした。

簿記の学習など机上の定義では簡単に分けられそうになっているものの、実際の実務においては意外と迷ってしまうこともあります。

今回のブログのケースはそこまで迷う論点ではないかもしれませんが、他の事案で会計処理で悩ましいことが発生した場合には、まずは会計理論的な本質の部分に戻ることで、あるべき会計処理方法が見つかるのではないかと思います。

その一端として今回の科目の比較を紹介しましたので、ぜひ理論的背景を考えて実務をしてほしいなと思います。