(業種別経理実務のポイント)建設業の経理実務のポイントとは??→わかりやすく解説します!

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こんにちは、ひめのです。
業種別の経理実務のポイント第2弾「建設業」です。

建設業は建設業会計という言葉があるぐらい、一般的な業種とはちょっと違った取り扱いをすることがあります。

建設業会計についてはこちらのブログでも解説してますので参考にしていただければと思います。

今回は建設業の経理実務の具体的な部分にフォーカスして書きたいと思います。

建設業の特徴

建設業は、建物や橋梁などの建造物を建てるだけでなく、電気水道通信などのインフラ工事も建設業に含まれます。

また、公共事業の大規模なものから、小さな部屋のリフォームまで、規模も様々です。

会計的な観点を踏まえた建設業の特徴を整理すると次のような事項が挙げられます。

□1案件の取引金額が大きくなる
□完了するまでに長期にわたることがある
□協力会社との連携が重要
□個別原価計算による管理
など

1案件の取引金額は比較的大きくなることが特徴で、規模が小さかったとしても小売業等の取引額とは桁が違う取引金額になることが多いです。

1案件の規模が大きいと、完成までに時間を要し、1年で完了しない工事も中にはありますので、そのような場合には工事原価の管理が重要となります。

そして、元請業者だけで工事はできませんので、材料の調達から設計現場の職人さんに至るまで幅広い分野の協力会社の存在なくして建設業は行えません。

したがって、案件を受注するにあたっては、対応できる協力会社の有無も大きく影響することになります。

また、非常に大きな規模の建設工事となると、他社と共同企業体(JV)を組んで受注することもあり、その場合の会計処理にも留意が必要です。

その他、建設業では一般的には原価計算は個別原価計算を採用しており、1案件ごとに原価を集計し売上原価を算出することとなります。

具体的には、案件管理の一環で行われ、見積段階では1案件ごとに積算し、実際に受注したあとは、採算がとれるよう案件管理を行なっていくことが実務上は必要になってきます。

建設業の経理実務

建設業は建設業会計という独自の科目形態があり、次のような科目を使用します。

■売上高  →完成工事高
■売上原価 →完成工事原価
■売掛金  →完成工事未収入金
■仕掛品  →未成工事支出金
■買掛金  →工事未払金

ただし、科目名は違いますが、仕訳処理自体は製造業に近い形で処理しますので、そこまで特殊ではないと思います。

では、建設業特有会計上の論点財務上の論点を見ていきたいと思います。

会計上の論点

ひと月で完了しない工事や、長期にわたる工事については、工事の進捗に応じて売上高を計上する「工事進行基準」があります。

この基準は新しい収益認識基準が公表されたことにより廃止になりますが、その考え方については新しい基準の中に包含され、収益認識基準の中において、進捗に応じて計上すべきか、それとも完成時に一括計上すべきかの判断をすることとなります。

長期になれば、必ずしも進捗に応じた計上が必要となるわけではなく、契約条件等を踏まえて個別に判断していくことになります。

また、建設業においては各案件ごとの個別原価計算の正確性が重要となり、それはそのまま未成工事支出金か完成工事原価に紐づいてきますので、留意が必要です。

特に、工事の中には工事が進むにつれてイレギュラーなことが発生することもあり、場合によっては当初の積算額を超えてしまう原価が掛かってしまうケースもあります。

その超過分について、追加で請求することができない場合には、その工事案件は赤字案件ということになってしまいます。

会計上は、その赤字案件について、赤字になることが見込まれる場合には、損失を繰り延べないために引当金を計上しなければならないため、各案件ごとの管理や原価計算は大切な要素となってきます。

財務上の論点

建設業の取引金額は金額が大きい上に、協力会社への材料費や外注費等の支払いが先行しがちで、大規模工事になれば、着手金中間金と施工主から先にお金をもらうこともありますが、それら踏まえても、工事を受注すると同時に資金繰りにも気をつけなければならないところが、この業種の特徴かと思います。

案件が大きくなればなるほど、動くお金も大きくなりますので、受注するにあたっては資金の余裕度を考慮して、事前に資金調達する等の対策が必要です。

あとがき

以上が、建設業の特徴を踏まえた経理実務の解説でした。

建設業についての経理実務は勘定科目が少し特殊だったりしますので、最初は慣れないかもしれませんが、基本的なところは大きく変わりません。

一方で、建設業特有の会計上の論点がありますので、その論点を検討できるよう、自社のビジネスをよく理解し、各案件を適切に管理できるような体制を整えることが、建設業の経理実務においては重要ではないかと思います。