財務会計システムで管理会計を行うことには限界がある理由(やっても組織別管理までかなと)

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こんにちは、ひめのです。
以前のブログでは「財務会計と管理会計の違い」「中小企業に管理会計が大事であること」について書きました。

財務会計は制度上定められたものであるため必然的に行う会計実務であり、財務会計システムを利用して会計帳簿の記録を行うことが一般的です。

管理会計についても財務会計システムを利用することである程度行うことができますが、財務会計システムを活用して管理会計を行うには一定の理由により限界がありますので、財務会計システムにおいて管理会計を行おうとする場合は注意が必要です。

財務会計システムで管理会計を行うことには限界がある理由

管理会計には、事業別や組織別、拠点別の損益管理のほか、プロジェクト別管理、原価計算、予実管理などの経営の意思決定において有益と思われる数字の管理があります。

これらの管理を財務会計システムで行うには主に次の理由により限界があります。

■細分化するため仕訳が細かくなる
■確認する仕訳の量が増え見づらい
■残高の確認に手間がかかる
■設定の自由度が低く自社にあった管理にできない

例えば、プロジェクト別に管理しようとした場合に、仕訳をプロジェクト別に入力することになりますが、一つの取引の中にAプロジェクトとBプロジェクトが混在していると、それを分けて仕訳入力することになります。

そのため、この場合には一つの取引で仕訳数が2つになるわけですが、これがどんどん増えてくると仕訳数も取引数以上の数となってしまいます

その結果、総勘定元帳などで確認した時に細かすぎてわかりづらくなってしまい、仕訳の確認や残高の確認に時間がかかってしまいます。

そして、細かい区分で管理する時には、ある取引がどの部門やプロジェクトと紐づくのかという確認も必要であるため、その確認に対する業務フローが確立させていなければ、仕訳入力するまでに時間がかかってしまいます

また、財務会計システムはあくまでも財務会計を行うためのシステムであるため、個々の企業の事情に合わせた管理会計ができるほどの自由度の高い機能を備えていることは少ないです。

そのため、自社にとって本当に必要な管理会計ではなく汎用的な管理しかできないこととなり、効果が半減してしまう可能性もあります。

逆に細かく管理ができる機能があったとしても、財務会計まで意識した設定に手間取ってしまう恐れもありますので、財務会計システムで管理会計を使いこなそうと思うとなかなかうまくいかず、ここが限界であると言える理由です。

以上を踏まえると、財務会計システムで管理会計を行うとしても、組織別管理程度までにとどめておき、それ以上の細かい管理となれば別のシステムや方法により管理することが望ましいと考えます。

システム連携にも限界がある

他の管理システムからのシステム連携で取り込むので手間がかからないという見解もあるかもしれませんが、これにも限界があります。

取り込めるデータの粒度や取り込み時の登録内容に制限があることも少なくなく、そのために取り込み後の仕訳がよくわからない状態となってしまい、もはや正しいのかどうかの確認がとりづらい状態となってしまう恐れがあります。

また、例えば販売管理システムから財務会計システムへ売上の情報を取り込めたとしても、債権の残高管理にまで配慮した取り込みができていないことがあります。

結局、PLの売上高だけでなくBSの売掛金も取り込むことになりますので、取り込み後に計上された売掛金の残高が消し込まれて、適切な残高となっているか確認する上で、インプットの仕方によっては確認しづらいものとなってしまいます(計上が細か過ぎて入金の金額との付き合わせがしづらいなど)。

債権管理自体は別の機能で行えていたとしても、経理担当者や経営者は最終的に出来上がった試算表に計上されている売掛金の正しさを確認する責任があります。

入金サイトがすべて1ヶ月の取引であれば、期末残高が期末日までの1ヶ月分の売上高と一致していることになりますが、例えば入金が遅延している場合や、取引条件により1ヶ月分以上の売上に対する売掛金残高となっている場合もあります。

その場合、チェックしやすいように仕訳入力しておかないと、あるべき売掛金残高との差異チェックに手間がかかってしまいます。

このように、むやみにシステム連携をしてしまうことにより、帳簿全体の管理に影響を及ぼしてしまい、一方で効率的となっていても、他方で非効率となるケースも多いです。

したがって、システム連携するのであればその弊害や効果についてしっかりと吟味してから判断すべきです。

連携の部分の一部の業務の効率化だけがフォーカスされがちですが、会計実務は多方面に影響を受けますので、最終的に帳簿を完成させるという点に立った時に、はたしてそのツールの導入やシステム連携がメリットあるのかどうかを考える必要があります。

あとがき

以上が、財務会計システムで管理会計を行うことには限界がある理由でした。

なお、管理会計の一部には資金繰りの管理もありますが、財務会計システムにおいて資金繰りの管理を一体で行うことも難しいです。

財務会計システムを利用して過去の資金繰り表やキャッシュ・フロー表を作成することは比較的容易かもしれませんが、ある程度の未来まで含めたキャッシュの管理となると、確定要素と未確定要素が混同するため、財務会計の外で管理せざるを得なくなります。

したがって、個人的には無理に財務会計システムを使ってなんでも管理しようとするのではなく、より適切に目的に合致した管理できる別のシステムや方法を考えていくことをお勧めします。