(いまさら聞けない経営管理のキソ) 主要な経営指標や近年注目されている指標を紹介します

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こんにちは、ひめのです。
今回は、経営管理においてよく使う経営指標について解説したいと思います。

主な経営指標

今から紹介する経営指標は、一度は見たことがあるような良く出てくる指標です。こちらについてはいくつかの分類に分けることができます。

・収益性
・安全性
・生産性

の3つです。

「収益性」は事業の収益性を見る上で参考になる指標です。

「安全性」は企業の財務についての安全性を示す指標です。

「生産性」は投下資本等に対してどれだけ効率的に価値が生み出されたかを示す指標です。

収益性

■売上総利益率
「売上総利益/売上高」

いわゆる粗利率です。

粗利率が高い方が競争力の高い製品やサービスを提供しているといえます。

■営業利益率
「営業利益/売上高」

本業でどのくらい利益率が出ているかという指標です。

様々な意思決定に営業利益は利用されますので、この指標も重要度が高いと思います。

■経常利益率
「経常利益/売上高」

営業外損益まで含んだ経常利益を含んで算出したものです。

日本企業では経常利益(率)を重視している企業が多いと言われていますが、最近では産業形態も変わってきていますので重視する指標は別の指標のことも多いです。

■自己資本利益率(ROE)
「当期純利益/総資産」

投資家が投下した資本に対してどの程度企業が利益を出しているかを示す指標です。

言い方を変えると、投資家目線での投資に対する利回りがROEとなります。

こちらも外部投資家が存在する場合には重要な指標です。

ただし、ROEを過度に追い求めると短期的な利益を求め過ぎてしまい、成長性が損なわれてしまう恐れがあります。

■総資本利益率(ROA)
「利益/総資産」

利益と表現したのは、当期純利益を用いたり経常利益を用いたりする場合があるので、利益と表現しました。

ROAは総資産に対して生み出された利益の程度を示す指標です。

この数値が高いということは、少ない資産で多くの利益を生み出しているということであり、効率的に利益が生み出されているといえます。

安全性

■流動比率
「流動資産/流動負債」

流動資産(主に短期的に現金化できる資産)に対して流動負債(主に短期的に現金が流出する負債)の割合を示します。

一般的には200%を一つの目安にすると良いと言われています。

■固定費率
「固定資産/自己資本」

この数値が低いほど良いとされていますが、100%を超えるということは自己資本以外の他人資本(借入金など)により固定資産を調達しているということになります。

■自己資本比率
「総資産/自己資本」

固定費率に似た話になりますが、企業の総資産をどの程度自己資本でまかなえているかという指標となります。

この数値が高いほど借入金などに頼っていない経営になっているといえますが、事業の特性にもよりますし、総資産の金額が大きくかつ自己資本比率も高ければ優秀ですが、総資産の金額が小さい場合には自己資本比率が高くてもあまり意味のない数値となってしまいます。

生産性

■付加価値額
「経常利益+人件費+賃借料+金融費用+租税公課+減価償却費」

付加価値額とは、企業の生産活動によって生み出された価値の総数を指します。

■労働生産性
「付加価値額/従業員数」

従業員1人あたりの付加価値額を示す数値です。

この数値が高いほど、少ない人数で多くの価値を生み出しているということがいえます。

■資本生産性
「付加価値額/総資本」

投下した資本でどれだけの付加価値を生み出しているかという指標であり、数値が高いほど効率的に付加価値を生み出しているということになります。

■労働分配率
「人件費/付加価値額」

付加価値額に占める人件費の割合です。

一般的にはこの数値が低いほど良いとされています。

つまり、この指標でいかに少ない人数で付加価値を積み上げているかどうかということがわかります。

注目の経営指標 4選

近年、急速に伸びている企業や気鋭のスタートアップ企業、ユニコーン企業が指標として重要視している経営指標のうち4つを紹介したいと思います。

■EBITDA(イービットディーエー)
「営業利益+減価償却費」
「経常利益+金融費用+減価償却費」
など

こちらの指標はソフトバンクグループが毎回の決算で重要視していることでも有名です。

計算方法は複数存在していますが、簡単にいうと簡易的な営業キャッシュ・フローの数値です。

キャッシュ・フローベースでの稼ぐ力がどの程度あるかという指標となります。

特にグローバル企業になりますと、各国で計上基準が異なる場合もあり、利益ベースでは本当の稼ぐ力が不透明になってしまうこともあります。

したがって、EBITDAを活用しキャッシュ・フローベースでの指標を重要視する企業が増えています。

■MRR(Monthly Recurring Revenue)
「ARPU(月次の顧客1人あたり平均収益)×顧客数」

最近で多くなったサブスクリプション型のビジネスにおいて重要視される指標で、名前の通り月次の経常的な収益の金額を算出します。

契約期間や支払方法にばらつきがあった場合にも平均値を用いて算出します。

売り切りのビジネスと違い、サブスクリプション型のビジネスは継続的に収益が見込めることが特徴で、企業の将来価値を算定する際の評価にも用いられます

■LTV(Life Time Value)
「顧客の平均購入単価×平均購入回数」

1人もしくは1社の顧客が自社との取引開始から終了まで(顧客ライフサイクル)の間に、どれだけの利益をもたらすのかという指標を算出します。

多くの場合顧客との取引は一度限りではなく、継続的に購入したり利用したりするケースが多いです。

したがって一般的にロイヤルティーが高い顧客ほど、顧客ライフサイクル内に多くの利益をもたらしてくれるためLTVが高くなります。

近年では新規顧客獲得よりも既存顧客をいかに満足させ維持していくかという視点でのマーケティングが注目されこの指標も重要視されています。

■CAC(Customer Acquisition Cost)
「顧客を獲得するためにかかったコスト/新規顧客獲得数」

こちらは、顧客獲得にかかったコストを指します。

顧客獲得のためにかけたマーケティング費用や広告費などの程度を示す指標となりLTVとの比較などに用います。

新規顧客獲得にコストをかけ過ぎてしまうと事業全体のバランスが崩れてしまいますので、この数値を定期的にモニタリングすることは重要です。

あとがき

以上が一般的な経営指標と近年注目されている指標の紹介でした。

計算自体は簡単ですが、算出された数値をいかに活用するかが重要であり、経営指標の算出で満足するのではなく、その後にいかに対策を施すかが重要であるとともに、正しい数値が算出されるためには、普段から正しい会計処理や数値の積み上げを行なっておかないと、経営指標を用いた経営管理が行えないことを忘れてはならないと思います。