(経理実務のポイント) 会計処理業務は結果以上にプロセスが重要!?
こんにちは、ひめのです。
今回は経理実務にとって重視してもらいたい点について書きたいと思います。
経理業務は結果以上にプロセスが重要!?
経理業務には会計仕訳を記帳し残高試算表・決算書を作るという大事な仕事がありますが、この仕事を行う上で重視すべきことは作成過程です。
理由は、作成される過程に問題がある・脆弱である場合には、成果物の信頼性が危うくなるため経理業務は大きなリスクを抱えていることになるからです。
そういう意味では、経理業務は誰にでもできる仕事でもないし、簡単に全てを何かで代用できるものでもないといえます。
会計処理は機械的な業務と思われがちですが、すべてがそうではありません。
確かに事象によっては機械的に処理してしまっても問題ないものもあり、そういった部分は効率化・自動化を推進するべきことだと思います。
一方で、機械的な作業にしてはいけない会計処理もあり、その会計処理に限って財務諸表全体に大きく影響を及ぼす重要な場合が多いです。
【機械的にできるものの特徴】
・・・契約により毎月同じ金額が同じ時期に計上される
・・・金額が僅少で、取引内容が単純でシンプルなもの
例)振込手数料、リース料、地代家賃など
これらは、発生すれば毎回同じ処理を行うものであり、家賃やリース料などは最初の契約時のところさえ抑えれば、あとは機械的に処理できるような取引です。
【機械的に処理してはいけないものの特徴】
・・・取引内容が複雑で、検討しなければならないことが多岐にわたる
・・・会計基準上の適用において計上までにいくつか検討が必要
・・・会計上の見積もり項目
例)売上、売上原価、固定資産、税効果会計など
売上と売上原価は本業の成果を表す一番大事なところですので、もともと別途管理していることが多いです。
実績率による貸倒引当金の計上や、税効果会計による繰延税金資産の計上については、算出方法自体は計算式が決まっているので単純のように見えますが、算出するまでに取捨選択や妥当性の検討など理論的背景も踏まえて良く基準を理解した上で会計処理しなければ、大きく誤った処理となってしまう可能性があります。
また、財務諸表は「数値の正しさを確認する人」「数値を活用して意思決定する人」など様々な社内外の人が見ることになる数値情報です。
そのため、計上された数値の根拠を明確に説明できるようにしておかなければなりません。
「前の仕訳を見て同じように処理しました」という答えは「頭使って会計処理してないです」と答えているのと同じです。
経理業務を行う上では、全ての処理において計上根拠を自分の言葉や根拠資料をもとに説明できるようにしておくことが大切です。
処理方法の妥当性の検討
その①
前回と同じ取引だからといって同じ会計処理で良いとは限りません。
会社の状況や事業環境の変化、法律自体が変わってしまった場合などにより、過去行われた取引と同じ取引が行われていたとしても、会計処理が変わることはあります。
過去の処理を鵜呑みにすることなく、特に重要な取引については慎重に検討して会計処理する必要があります。
会社のことや事業全体のこと、自社を取り巻く法制度のことを常に把握しておかなければ、正しい会計処理は行えません。
例:外注費ではなく固定資産
いつもと同じ外注先に業務をお願いしていたとしても、実は自社で利用する何かを作ってもらっていた場合、売上原価ではなく固定資産として計上しなければなりません。
何も考えず、いつもの外注先から請求書が来ているのでそれを外注費で処理してしまっていては、全然違う結果を招いてしまします。
その②
特に会計上の見積もり項目(引当金、減損、税効果など)については、算出する計算方法自体は会計基準で定められている通り行えば良いですが、算出するまでにいくつかステップを踏んで数字を積み上げたり数字の取捨選択が必要になってきたりすることがほとんどです。
したがって、ただ「これとこれを足して掛ければ良い」みたいな感覚では大きなミスにつながります。
会計基準の内容を熟知し理論的背景を理解した上で会計処理を行う必要があります。
例:例:税効果会計の場合
「一時差異×実効税率」で計算するものとだけ理解している方が多いですが、そんな簡単なものではありません。
まず、一時差異となるものかどうかの判断が必要で、それには全体的な税務と会計の両方の理解が必要です。
さらに、会社分類がどれに当たるのかにより、一時差異全部を税効果の対象とできるかどうか範囲が変わります。
つまり、一時差異を認識したとしても、全てが税効果の対象とならないことも十分にあります。
説明根拠の整理・保管
経理業務は業務を行なっている自分自身のためだけに行う業務ではありません。
次のように経理業務の結果は様々な人に閲覧利用又は調査されます。
□自分の業務の後に誰かが引き継いで行う
□自分がやった業務を誰かがチェックする
□経営陣に数値情報を提供する
□税務調査の際に内容を説明する
□会計監査の際に内容を説明する
□株主・債権者へ決算説明をする
誰かに見られることや誰かに説明すること前提で仕事を行う意識が非常に重要で、そのためには会計処理の根拠を説明できるように、根拠資料を用意しておくことや計上時に情報を的確に記録しておくことなどの対応が必要となってきます。
例えば、売掛金ひとつをとっても、「残高の内訳がわかる」「売掛金の年齢がわかる(滞留状況)」資料が用意されていなければなりません。
これが示せないと、本当に正しい残高となっているかを確かめようがありませんし、結果的に信頼性が疑わしい会計数値となってしまいます。
以上が、結果よりプロセスが重要であることの解説です。
経理業務はただ簿記を知ってて機械的に会計処理すれば良いというものではなく、広い視野で頭を使いながら、一つの会計処理のために様々な対応が必要であることがわかっていただけたのではないでしょうか。