(中小企業向け)会計ソフトで資金繰りを管理できるか?【結論:できるけどお勧めしません】
こんにちは、ひめのです。
今回は、資金繰りの管理って会計ソフトでもできるんじゃないか?という疑問について書いてみたいと思います。
会計ソフトで資金繰りを管理できるか?
資金繰りを管理するためには、「資金繰り表」を作成することになります。
会計ソフトには資金繰り表を作成できる機能がついていることも多く、結論としては資金繰り管理ができないわけではないです。
しかし会計ソフトで資金繰り管理を行う場合、次のような特徴により継続的な運用や有益な情報を得るためには難点があります。
①会計ソフトはあくまでも財務諸表を作成するためのもの
一般的に、会計ソフトは複式簿記による会計処理を行い試算表や決算書を作成するためのツールであるため、事業活動における確定した事実のみを記録していきます。
したがって、直接帳簿上に「発生主義の範疇を超える」今後の予定や事業計画を混同して記録することは、正確な決算書作成の妨げになる恐れがあり現実的に帳簿上で管理は難しいと思います。
②帳簿を元に作成される資金繰り表は過去の情報
資金繰りの管理の最大の重要ポイントは、予定や計画を記録し更新していくことにあります。
会計ソフトへ入力した内容を元に資金繰り表を作成する機能があったとしても、それは過去の資金繰りの情報であり、情報の価値としては少し下がってしまいます。
また、仕訳から作成されるわけですから、まず仕訳入力をしなければならず簿記に対する相応の知識が必要となるのもハードルが上がる一因です。
③資金繰り管理機能があっても事前設定のための会計やそのシステムの理解が必要
中には、将来の予定も入力できるオプション機能をもった会計ソフトも存在します。
しかしながらオプション機能を活用する場合でも、大抵の場合は仕訳入力との連動性を含めたその会計ソフトの機能を十分理解し、思い通りのアウトプット表示となるような事前の設定が求められるため、結局は会計の仕訳入力と一体として考える専門的な素養が不可欠となってきます。
以上の理由から、会計の知識や会計ソフトの機能を熟知している方以外は、会計ソフト上で資金繰りの管理をすることはお勧めしません。
私は、より適時適切に資金繰りの情報を得るために、会計帳簿とは切り離した管理をする方が適切な場合もあると考えています。
誰もが直感的に理解できる会計情報は「資金繰り(キャッシュ・フロー)」の情報である
全ての企業が毎期決算書を作成し税務申告をしなければなりません。
しかしそのとき作成される試算表や決算書を読み解き分析するためには、ある程度の簿記や会計理論の知識が必要になるため、誰もが直接的に事業に活用できているかというとそういうわけにもいかないのが現実です。
一方で、資金繰りの情報はどうでしょうか?
お金の流れを理解することはそこまで難しいことではありません。「いつ、どこから、いくら、どのような内容の入出金があったか、またはある予定か」ということを把握するだけです。
どちらかと言うと資金繰りの情報は経営者目線の会計情報といっても良いかもしれないくらい、経営者には一番身近な会計情報になると思います。
最も単純である一方最も重要な会計情報、それが資金繰りの情報ということになります。
ちなみに、中小企業においてはそもそも作成された決算書が「税務を中心とした会計」となっており経営にはそのまま活かせない代物になってしまっていることから、その決算書を一生懸命分析しても時間と労力がかかるだけで期待された成果は得られないと思います。
「会計」とは本来、経営の意思決定のための重要なツールとして活用されるべきものですが、試算表や決算書だけが「会計」ではなく、資金繰り(キャッシュ・フロー)の情報も「会計」です。 昨今の移り変わりの激しい経営環境の中、経営者にとって常に欲しい会計情報は損益の過去情報ではなく資金繰りの未来情報であることは言うまでもないのではないでしょうか。