(入門編)内部統制を構築するために押さえておくべきポイント
こんにちは、ひめのです。
以前のブログで「内部統制とは?」ということについて、主に概略的な部分について書きました。
今回は、実際に内部統制を構築することを念頭に置いた場合、どのようなポイントがあるのかというところについて解説したいと思います。
内部統制を構築するために押さえておくべきポイント
以前のブログのおさらいですが、内部統制は4つの目的を達成するためのプロセスのことであり、6つの基本的要素から構成されています。
【内部統制の4つの目的】
■業務の有効性及び効率性
■財務報告の信頼性
■事業活動に関わる法令等の遵守
■資産の保全
【内部統制の6つの基本的要素】
■統制環境
■リスクの評価と対応
■統制活動
■情報と伝達
■モニタリング(監視活動)
■IT(情報技術)への対応
4つの目的は、各々が独立しているものではなく相互に密接に関係しています。
そのため、経営者が内部報告制度(金商法)に従って有効で効率的な「財務報告に係る内部統制」を構築しようとした場合には、その相互の関連性を理解した上で整備・運用しなければなりません。
つまり、財務報告は企業の業務全体に関係する財務の情報を集約したものであり、企業の組織における業務全体と密接に関わっていますので、経理関連部署のみならず営業関連部署等も含めた幅広い業務に関連した内部統制を構築しなければなりません。
内部統制の評価は大別すると「全社的な内部統制」と「業務プロセスに係る内部統制」に分けて評価することになります。
なぜ評価の話をしたかというと、内部統制の構築にあたっての留意点は内部統制の評価に関する理解をすることが近道だからです。
全社的な内部統制
実際の評価にあたっては、実施基準に42項目の評価項目例を参考にしますが、簡単に解説すると「経営レベルにおける内部統制」が全社的な内部統制です。
経営理念や倫理規則といったものから、各種規程類の制定、適切な人員配置、リスクの評価を含めた経営会議の実施、日常のモニタリングに関する事項、ITに関する事項というような、経営レベルでの全体的な内部統制の整備及び運用状況について評価する対象となるのが全社的な内部統制です。
業務プロセスに係る内部統制
業務プロセスに係る内部統制については「決算財務報告プロセス」と「それ以外の業務プロセス」分かれます。
決算財務報告プロセス
決算財務報告プロセスは、さらに「全社的な観点で評価すべきものとそうでないもの」に分けますが、全社的な観点のプロセスは、仕訳の記帳から財務諸表を作成する一連のプロセスなどが該当し、個別評価されるプロセスは、税効果における「繰延税金資産の回収可能性の検討」などが該当します。
決算財務報告プロセスは、まさに財務経理の業務フローそのものに近い範囲ですので、小さな企業でもこのフローを再確認して、有効で効率的な内部統制が構築されているかを検討する必要があると思います。
それ以外の業務プロセス
こちらはより具体的な個々の業務が対象となります。中小企業でも検討するべき事項が多いのがこの個別の業務プロセスです。
業務プロセスを整理すると例えば次のようにまとめられます。
□販売プロセス
・見積もり
・受注
・出荷、役務提供
・請求
・入金管理
など
□購買プロセス
・発注
・検収
・仕入、外注費計上
・支払管理
など
□棚卸資産管理プロセス
・発注、入庫
・出庫
・期末棚卸
・評価損の検討
など
□人事労務プロセス
・給与計算
・社会保険
・労働保険
・年末調整
・入社退社事務
・採用事務
など
□その他経費プロセス
・発注、契約
・経費の計上
・支払管理
など
これらプロセスを認識し、業務の流れを理解するとともに、リスクとなる部分を洗い出し、そのリスクに対応した内部統制を整備・運用することが必要です。
例えば、販売における請求書を作成する際、その金額が受注金額と一致していないリスクをリスクの一つとして認識したとすると、このリスクに対してどのような統制が必要かを考えなければなりません。
この場合であれば「受注記録を確認して請求書と金額が一致していることを確かめる」という統制が必要ですが、そう決めていても実際にチェックしていなければ内部統制が形骸化してしまうため、しっかり運用することが大切です。
ちなみに、この業務プロセスに関する内部統制の評価については、中小企業でも理解しておくべきものであると思います。
全社的な内部統制は企業の規模が小さいと、経営サイドの目が行き届いているのでそこまできっちりした規制や文書化を必要せずとも内部統制上問題ないことも多いと思われます。
一方で、業務プロセスについては企業の規模にかかわらず一定の内部統制を構築し運用しなければ取引を円滑に進めることができないだけでなく、取引上のリスクに対して対応できないことも考えられます。
内部統制は組織を円滑に動かすことには不可欠であるため、企業の成長には避けて通れない部分であるといえます。
内部統制の構築で大切なこと
全社的な内部統制も業務プロセスに係る内部統制もすべてにおいて言えることですが、内部統制は二段階で考える必要があります。
内部統制は「整備」と「運用」が双方機能していなければ意味がありません。
まず、いくら整備していたとしてもその内容がリスクに対応していないものであれば意味がありません。
例としては「規程を作ってもその内容が簡素すぎる」場合などです。
また、いくら適切な内容の整備を行なっていたとしても、その内部統制が運用されていなければ形骸化してしまい、効果が全くありません。
例としては「部長の承認を得るとしているにもかかわらず、その行為がなされていない」場合などです。
この二段階どちらも欠けてはいけないのが内部統制ですが、必ずしも本に書いてあるような理想論を採用する必要はありません。
自社の実態に合った内部統制にすることが重要であるとともに、代替的な統制が取れるかどうかを検討することが大切です。
違う見方をすると、小さな内部統制の積み重ねによって、企業外部のステークホルダーや取引先からの信頼を構築していると考えても良いかもしれません。