これからの時代に合った「中小企業における経理の理想型」とは??
こんにちは、ひめのです。
昨今、経理界隈ではクライド型のITツールを中心に様々なサービスが誕生しており、私自身も資金繰り管理に特化したクラウドシステムmilestoneを提供しています。
クラウドサービスを使うことで、効果的に業務を行える経理環境が整いつつあり、経理業務も以前とは様変わりしてきたと感じている人も多いことと思います。
特に中小企業においては、経理業務を行う人材を確保することが難しく、また経理業務という「管理業務」に対してはコスト意識が強いため優先順位が低く、経理機能全体をアウトソースしてしまうことや、効率的な業務を行えることを期待して新しいクラウド型のITツールの導入を検討する企業が増えています。
今回は、「そもそも企業における経理にはどのような業務があるのか」という整理とともに、とりわけ「中小企業においてはどのような形の経理が望ましいのか」という点について、私の考える未来の「中小企業における経理の理想型」について書きたいと思います。
これからの時代に合った「中小企業における経理の理想型」とは??
まず、「経理」というと、皆さんどのようなイメージをお持ちでしょうか。
経理は簿記の知識が必要で専門性の高い業務と思われている人も多いかと思います。
そのため「経理業務は簿記の知識がある人や簿記の資格を持っている人がやるもの」というイメージが強い傾向にあります。
一方で、経理業務の中には簿記の知識を使わない重要な業務があります。たとえば次のような業務です。
□請求した売上が入金されたかどうかを管理する「入金管理」
□支払うべき給与や経費を滞りなく支払うための「支払管理」
□資金が枯渇してしまわないための「資金繰り表の作成」
□将来の入出金予定を把握して経営の意思決定のための情報提供
など。。。
これらの業務は、特に簿記の知識がなくても行えますが、会社を維持・成長させるためには欠かせない重要な業務です。
中小企業では資金が潤沢でないことも多いため、日々の入出金を適切に把握し資金繰りを悪化させないようにすることは、何よりも優先すべきことであると言っても過言ではありません。
(資金繰りの管理を何よりも優先すべきである点については、こちらのブログで詳しく書いています)
以上のことを踏まえると、経理の業務は次のような種類に分けることができます。
[分類A:簿記の作業]
→仕訳入力、損益の管理・予測、決算書作成など
[分類B:資金繰りの管理]
→入金管理、支払管理、資金繰り表作成、将来の資金計画など
大まかにこの二つの業務が経理の業務を構成していると考えた場合、分類Aの「簿記の作業」については簿記の知識が必要な業務であるため、どうしても簿記を習得した人材を確保する必要があると考えてしまいます。
しかしながら、特に中小企業では人材の確保自体が難しいだけでなく、人材の確保と維持にコストがかかり、なかなか経理業務に簿記ができる専任の担当者を据えることができないのが現状です。
そこで、この解決策として考えられる方法としては、次のようなことが挙げられます。
①効率的で会計に詳しくない人でも使えるITサービスを導入する
②経理全般をアウトソーシングして経理機能そのものを会社から無くしてしまう
この解決策は、どちらも正解だと思いますがどちらも不十分ではないかと思います。
①の問題点
ITツールを使うことで仕訳入力業務について知識がない人が行うことも可能になるかもしれませんが、正しく処理がなされているかが入力者本人ではわからないため、結局のところ簿記や会計がわかる人がシステムの事前設定をしたり、入力者が作業した内容をチェックしたりする必要が出てきます。
知識のない人が不用意にITサービスを利用して自動的な処理を行うことにより、その処理が正しいかどうかの判断がついていないものが無数に発生することにもなりかねません。
したがって、そのようなことがないよう、導入時にうまく仕組化して全体的に効率化を図れるよう様々な検討をするとともに、運用面でも定期的にケアする必要があります。
しかし、その導入を適切に行い仕組化するためには相応の時間とコストがかかってしまいます。
②の問題点
業務をアウトソースする上では、「何をアウトソースして何を自社に残すか」という取捨選択が重要となります。
この点、二つの業務のうち「分類B:資金繰り管理」については、アウトソースを検討した時、残すべき業務であり、残さざるを得ない業務であるという性質があります。
ではなぜ、残すべきであり残さざるを得ない業務と言えるのでしょうか。
残すべき理由
資金を枯渇させないための入出金予定の把握の把握や、将来の意思決定のために検討する資金計画は、会社を維持・成長させるために重要な業務であり、またリアルタイムで把握しておくべきことでもあるため、本来は会社の外で管理すべきものではないと考えられます。
残さざるを得ない理由
資金繰りの管理は実際のお金を扱う部分に当たりますのでそれを社外で取り扱うとなると心理的に抵抗感がある方も多いと思います。さらに、仮に社外で取り扱うこととした場合でも、責任の所在が明確となるようなルールを設定したり、アウトソーシング先を定期的に監督したりする必要が発生し、結果的に期待されたほど省力化できないことも考えられます。
以上のことを踏まえると、中小企業の経理業務においては、2つに切り分けた業務のうち「分類A:簿記の作業」はアウトソースし「分類B:資金繰り管理」は自社に残すハイブリットな方法が解決策の一つになるかと思います。
そうすることで、自社の確保する人材については専門知識にとらわれることのない幅広い人員確保の選択肢となり、結果的にコストが抑えられるとともに、資金繰りの管理のみに集中できるようになるため今までよりも安定的で積極的な経営が実現できる可能性が高くなります。
ただし、ここでもう一つ問題があります
このまま単純に「分類A:簿記の作業」をアウトソースすると、実は却って非効率となってしまうおそれがあります。
「簿記の作業」と「資金繰り管理」は密接に関わる業務です。
それぞれの業務は同じ取引情報をもとにして、それぞれ必要な結果を得るために管理集計していきます。
したがって、情報源が同じにも関わらず、全く同じ数値を2回・3回とシステムやエクセル、手書き台帳にインプットすることとなり、非効率な結果を招く可能性があります。
中小企業における経理の理想型
そこで、この非効率さを解消するための方法として次のような考え方を検討してみてはいかがでしょうか。
「インプットの出発点を資金繰りの管理とする」という発想です。
経営において一番に知りたい数値情報は資金の情報ですので、最初の数値インプットは資金の情報を得るための業務「資金繰りの管理」である必要があります。
一方で、入金管理と支払管理を1箇所で管理して資金の情報を適切に把握することができれば、それらの情報は「簿記の作業」で作成される預金元帳のベースとなる情報となり得ます。
その情報をうまく活用し、足りない部分のみを補って最終的に試算表を作成できるよう仕組化してしまうことで、効率的な「簿記の作業」のアウトソースが実現できます。
もしくは、アウトソースしなくても資金繰りの管理を中心とした新しい効率的な経理業務のフローが実現します。
私の考える中小企業における経理の理想型について簡単にまとめると次のようになります。
1.自社から「簿記の作業」を無くして「資金繰り管理」のみに集中できる体制を作る
2.資金繰りの管理に関する情報を利用し「簿記の作業」の効率的なアウトソースを実現する仕組みを作る
この考え方が全ての企業に当てはまるわけでもありませんが、一つの解決策として参考になれば幸いです。
ちなみに、もし新しい経理業務フローを実現したいと思う方がいらっしゃいましたら私がサポートしますので、お気軽に会社HPからお問い合わせください。