毎月の試算表をどんなに早く作成しても、試算表ではキャッシュ・フロー(資金繰り)の管理ができない「3つの理由」
こんにちは、ひめのです。
どの企業も作成する試算表ですが、この試算表を毎月早く作成すれば「試算表を活用してキャッシュ・フロー(資金繰り)の管理が行えるのではないか」と考える人も(特に中小企業において)少なくありません。
しかしながら、毎月試算表をどんなに早く作成しても、残念ながら試算表をキャッシュ・フロー(資金繰り)の管理に活用できません。
理由は大きく分けて以下の3つです。
■ 試算表を見ただけではキャッシュ・フローの情報がわからない
■ 試算表は将来の予測や変動を反映するのが難しく将来の予定の管理に向いていない
■ 試算表はあくまでも財務報告用。管理会計も含め内部管理も包含させるほうがコスト
この3つの理由について今回は詳しく解説したいと思います。
ちなみに毎月の試算表自体が、経営にとって(特に中小企業において)重要度がそれほど高くないことについても別のブログで書いていますので、興味があればこちらをご参照ください。
試算表を見ただけではキャッシュ・フローの情報がわからない
一般的に試算表に含まれる情報はいわゆる会計情報でありPLとBSを確認することができます。
このPL・BSといった会計情報ではキャッシュ・フローの情報を読み解くには、さらなる手間を加えなければなりません。
ご存知の通り、PLに表示されている損益情報は減価償却費などのキャッシュ・フローが伴っていない情報も含まれていますし、キャッシュ・フローを伴うとしてもそれがいつ流入流出するかはPLを見ただけでは分かりません。
また、BSについては売掛金や買掛金・未払金といった、将来キャッシュ・フローが流入流出する予定の金額が確認できますが、あくまでも金額のみであって、その時期がいつかは読み解くことはできません。
キャッシュ・フローの情報を得るためには、BSの増減とPLの損益情報を組み合わせてキャッシュ・フロー計算書を作成しなければならず、この作成には一定の知識が必要であるとともに、作成にさらなる時間も要してしまいます。
また、次の項で書きますが、このキャッシュ・フロー計算書は過去の終わった事実がわかるだけですので、将来の予定管理という意味では、あまり有用とは言えない情報となります。
以上のこと踏まえると、試算表だけを見てもキャッシュ・フローの情報を得ることは容易ではないことがわかるかと思います。
試算表は将来の予測や変動を反映するのが難しく、将来の予定の管理に向いていない
試算表は、基本的には過去の会計情報が表示されています。
BSを見れば将来のキャッシュ・フロー予定となりうる情報も見ることができますが、キャッシュ・フロー(資金繰り)の管理という点では完全に不十分です。
キャッシュ・フロー(資金繰り)の管理において最も重要なことは、将来の予測や変動を管理情報に反映し、資金残高の推移や資金使途の時期・金額を検討及び実行の意思決定することにあります。
試算表は会計情報であるため、最終的に決算や税務申告に利用されるものです。
したがって未確定の予定や予測までも反映させることは管理上混乱を招くため望ましくありません。
また、BSに計上されている売掛金や買掛金等の情報にしても、その入金されるべき、支払うべき時期が「いつか」という点については、別途管理が必要になりますので試算表のみで把握することは極めて困難と言えます。
したがって、過去情報の集約である試算表は将来の予定管理には向いておらず、キャッシュ・フロー(資金繰り)の管理に利用できるものとは全く別物であるということがわかります。
試算表はあくまでも財務報告用であるため、内部管理も包含させる方がかえってコスト高
試算表は、先ほどにも書いたように、最終的に決算や税務申告に利用されるものであり、財務報告書類として一定の表示のルールが決まっています。
企業によっては事業内容が様々ですが、試算表は利用する勘定科目は違えど、試算表自体のフォーマットや科目の並び、集計、差引利益計算については、ほとんどの企業で同じ形になります。
制度上財務報告が必要な一方で、企業は「経営」をしているわけですから、その経営に必要な管理が必要となります。
その経営管理は企業によって千差万別で、事業の内容によって管理方法も異なってきます。
企業独自の数値管理を管理会計と言いますが、キャッシュ・フロー(資金繰り)の管理もその一つです。
財務報告用の試算表を作成する過程で、企業独自の要素を取り入れて経営管理にも活かそうとすると、事前のシステム設定や仕訳入力時に膨大な時間がかかってしまう恐れがあります。
会計の専門的な知識が必要な会計システムを扱うことになりますので、担える人材も限定的となります。
また、日々更新していく必要がある中での維持管理にも相応の労力がかかりますので、試算表の作成の過程で内部管理要素も含めようとすると、かえって管理コストがかかってしまうことが想定されます。
したがって、財務報告目的とは別に、企業の経営管理の目的に合致した方法で別途管理する必要があり、キャッシュ・フロー(資金繰り)管理についても、別途Excel管理や専用のシステムを活用して行うことが求められます。
まとめ
以上が毎月の試算表をどんなに早く作成しても、試算表ではキャッシュ・フロー(資金繰り)の管理ができない「3つの理由」の解説でした。
試算表自体も会計情報として重要ではありますが、キャッシュ・フロー(資金繰り)の管理まで行えるかというと、それはまた別の話であって一体化させることは難しい、ということがはっきりしたのではないでしょうか。
最後に、私が代表をしている株式会社HIFASでは、キャッシュ・フロー(資金繰り)管理に特化したクラウドシステムmilestoneを提供しています。
キャッシュ・フロー(資金繰り)管理という目的に合致した専用システムですので、もしご興味がありましたら、こちらをご参照ください。