電帳法改正のゴタゴタから見る、経理業務のデジタル化が進まない根本的な原因とは?

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こんにちは、ひめのです。
電子帳簿保存法(以下、電帳法)の改正により、令和4(2022)年1月1日から電子取引の取引情報に係る電磁的記録の出力書面による保存が認められなくなりますが、令和3年12月10日に閣議決定された令和4年税制改正大綱において、電子保存の義務化について一定の要件下で2年間の猶予が与えられることが盛り込まれました。

施行間近になって、国税庁がQAを頻繁に更新していったところから始まり、今回の猶予に至るまでのいわばゴタゴタは、日本企業のデジタル化が進まない根本的な原因を如実に表した結果であると私は感じています。

そこで今回は、あくまでも個人的な見解ですが、二転三転する電帳法の改正への対応から見える経理業務のデジタル化が進まない根本原因について書きたいと思います。

経理業務のデジタル化が進まない根本的な原因

電帳法の改正に伴い、その対応に追われた企業がとった選択肢の一つとして「電子的に受け取っていたものを紙で受け取るように変更する」という、まさに本末転倒な結果を招く事例があるようです。

DXの時代に紙が増える方向へ舵を切る判断は時代に逆行するとも言える状況であり、それをもたらした原因は電帳法改正を主導した行政側とそれを受け止めた企業側双方にそれぞれにあると思います。

したがって、それぞれの問題点を中心に見ていきたいと思います。

デジタル化を阻む行政側での問題

今回の行政側の対応は、端的にデジタル化やDXを甘くみているというか、完全にその本質を履き違えているように感じます。

その要因として、企業全体の実情を把握していなかったという問題点と、デジタル化の意味を理解していないという問題点が考えられます。

今回の電子取引に関する電子保存義務化は、令和3年の税制改正で変更となったものであり、決まったのはちょうど1年くらい前です。

今までデジタル化に取り組んでいなかった企業が、急に電子保存義務化と言われても、簡単に対応できるはずもなく、各企業が準備に時間がかかることを想定していないと言わざるを得ません。

デジタル化ひいてはDXを達成するためには、企業の業務フローそのものが大きく生まれ変わることにつながります。

ただ単に紙をスキャンして電子化したり、電子データをそのまま保存したりしておくことがデジタル化ではないにもかかわらず、そういうことがデジタル化のメインと捉えているように見えるのが今回の事象かと思います。

あとは、保存要件がちょっと厳しいのではというのが個人的な印象です。

本気でDXを日本全体で進めたいのであれば、もっと思い切った緩和に踏み切る必要があります。

証憑の真実性ということは重々承知していますが、それを担保するための要件や対応がどうにも後ろ向きというか、「紙に戻してください」と言わんばかりの規定と捉えられてもおかしくないように思います。

デジタル化を阻む企業側での問題

もちろん、デジタル化を阻んでいるのは企業側にも問題があると思います。

一つは、デジタル化に対しての管理コストがかかることを嫌い、今のやり方を変えようとしない又はできない企業が多いこと、そしてデジタル化やDXに向けたリテラシーがまだまだ低いことが要因としてあると思います。

大きな変革を必要とするデジタル化ですので、金銭的なコストだけでなく時間的なコストもかかってしまうため、なかなかデジタル化への取り組みに踏み切れない企業は多いです。

具体的には、デジタル化の過程では何らかのシステムの導入が必要になることもあり、その導入費用がかかるだけでなく、運用に乗せるためには習熟するのに時間がかかってしまうことは否めず、結果として慣れている今のままが良いという結論に至ってしまいます。

行政側の問題でも書きましたが、デジタル化やDXは単なる電子化やシステム化をすることではなく、自社の業務を根本から生まれ変わらせていく必要がある取り組みです。

生まれ変わることにより、自社にどのような未来があるのかということや、どのようなメリットがありどのような新しい価値が生み出されるかということをどこまで理解できるかがポイントで、これもただの効率化にとどまらないことを知る必要があると思います。

あとがき

以上、電帳法改正のゴタゴタから見る、経理業務のデジタル化が進まない根本的な原因について書きました。

電帳法云々以前に、業務において必要なこととしてデジタル化を前々から進めている企業もたくさんあります。

それらの企業は、デジタル化に対しての煩わしさや手間といったネガティブなことはなく、自らの事業を運営する過程で必要なこととして実行してます。

今回の、電帳法の改正で多くの企業が「手間がかかる」という印象を受けたのではないでしょうか。

その印象を受けている時点で、今回の改正自体も受け止める企業もデジタル化やDXの本質を履き違えていると言わざるを得ません。

とはいえ、いずれは対応していかなければならないことではありますので、一人一人が今回のことを踏まえてデジタル化やDXについての理解を深めてより良い改革がされることを期待したいと思います。