(経理実務のポイント)預り金の管理がカオスになる原因とは??
こんにちは、ひめのです。
勘定科目の中で管理がカオス状態になりがちなものの1つに「預り金」があります。
預り金は文字通り、会社として一時的にお金を預かって後で返したり代わりに支払ったりするような性質を持つ科目です。
したがって、最終的には残高がゼロにならなければならないような科目ですが、様々な要因で残高の管理がうまくできなくなってしまい、気づけばカオス状態になりやすい科目です。
カオス状態にならないための対策ができるよう、今回は預り金の管理がカオスになりがちな原因について書きたいと思います。
預り金で管理するものとは?
預り金で管理するものはいくつかありますので、まずはそれぞれの内容について解説したいと思います。
源泉所得税
給与や報酬の源泉所得税は支払い時に控除しますので、その金額は会計処理では預り金として処理します。
そして、預かった源泉所得税を納付した時に預り金を減額する会計処理をします。
源泉所得税は、通常支払い月の翌月10日までに納付しますので、源泉所得税に関する預り金の残高は来月納付する分だけになっているのが残高をチェックする際のポイントになります。
ただし、納期の特例の場合は半年に一回の納付なので、預り金残高は半年分溜まることになります。
住民税
こちらも、源泉所得税と同じ理屈で、給与から控除した住民税を預り金の科目で会計処理します。
住民税も毎月10日が納付期限ですので、預り金の月末残高は、翌月に納付する分だけが計上されているはずということになります。
社会保険の従業員負担
社会保険の従業員負担分も、給与から差し引いたものを預り金の科目を使用して会計処理します。
社会保険は会社負担分もありますので、その分と預り金の金額を合わせて支払うことになりますが、社会保険の支払額は従業員負担分と会社負担分と分かれていることや、社会保険の手続きの関係で請求時期がずれてしまうことなどがあるため、社会保険に関する処理が1番カオス化する可能性が高いです。
雇用保険の従業員負担
雇用保険の従業員負担分も、社会保険と似たようなものですが、こちらは労働局への申告・支払いは年1回(支払いが複数になる場合はあります)ですので、その時期に残高を精算するような会計処理が必要になります。
預り金の管理がカオスになる原因とは?
では次に、預り金の各項目ごとに残高がカオスになりがちな原因を見ていきたいと思います。
源泉所得税
先ほども書いたように、源泉所得税の預り金残高は、来月納付予定となる金額となっているかどうかがポイントです。
しかし、次のような要因で残高に不整合が生じ気付けば不整合の要因がわからずカオス状態になる可能性があります。
■納付誤り
■納付漏れ
■納期の特例
■会計処理間違い
本来納付すべき金額を誤って納付してしまうことは、残高が残ってしまったりマイナス残高となってしまったりする原因です。
また、たまにしか発生しない専門家報酬などがあり、それを忘れて納付金額に含めず納付して納付漏れが発生してしまうことも要因となります。
また、納期の特例を適用している企業は、納付までの間に預り金の残高がどんどん増えていきますので、計上金額があるべき金額か判断つきづらくなるほか、その中で会計処理間違いをしていても気付きにくくなってしまいます。
住民税
住民税も源泉所得税とだいたい同じような要因で残高の管理がおかしくなることがあります。
それ以外の住民税の場合の特徴としては、退職者の住民税をどこまで徴収したかという点で、市区町村への異動届の提出と合わせて管理を適切にしておかないと、徴収漏れや過大徴収になってしまうことがあります。
社会保険や雇用保険
社会保険に関する預り金の管理は特にカオスになりやすい特徴があり、その要因としては次のようなものが挙げられます。
■社会保険の計算誤り
■届出のタイミングが遅れる
■換価の猶予を受けている
■振替を失念する
社会保険について、何月分をいつの給料で控除するかという点をルールとしてしっかり運用することが前提となりますが、こちらも従業員の入社・退職に伴う社会保険料の支払額の変動と預り金の残高でずれが生じてくることがあり、管理がとても大変になってしまうことが良くあります。
預り金の残高としては、基本的には一か月分が残るのが正解ですが、入社・退職が絡んだり、賞与や改訂が絡んで社会保険に関する届出が出された時期によっては請求が遅れることもありますので、その場合、残高がこちらの意図した通りの動きとならず、徐々にカオスと化してきます。
その結果、気づいた時には「なんでこの残高になるんだろう?」という状況になってしまい、遡って確認するのが容易ではなくなってしまいます。
また、最近のコロナ禍で増えていることでもありますが、社会保険の支払いが約定通りにできないことから換価の猶予を受けている場合があります。
その場合には社会保険料の発生と支払いが一致しなくなりますので、残高の管理がより大変になります。
帳簿上では管理しきれませんので別途管理表を設けるなどにより、残高の内訳が分からなくならないよう注意が必要です。
なお、社会保険については預り金から未払金へ毎月振り替えて、社会保険の支払額の残高として未払金で管理することも一つの方法かと思います。
雇用保険に関しては、年1回の労働保険の申告タイミングで、預り金、前払費用、未払費用等の関連する経過勘定の振替を忘れてしまうことがありますので、その際の会計処理には注意が必要です。
あとがき
以上が、預り金の管理に関してカオスとなる原因について解説しました。
解説したものの他にも、財形貯蓄など給与から控除して預かるものや、その他一時的に預かるものも預り金で処理することになりますが、預り金で処理したことを忘れてしまい解消時の仕訳を預り金ではない科目で処理してしまうと残高に狂いが生じる元となります。
このようなことが起こらないようにするためには、残高チェックを定期的に行うことが効果的です。
例えば従業員数が多くなってくるとチェックにかける時間も増やしていく必要がありますので、後々困らないよう、定期的なチェックを怠らないようにすることが大事だと思います。