【経理実務の心得】 経理担当者に知っておいてほしい「たった1つ」の大切なこと
経理担当者に知っておいてほしい「たった1つ」の大切なこととは?
それは、経理の実務で行った業務の「最終成果物を知る」ということです。
自分が行った業務によって「最終的に何が作成されるのか」「自社で作成しなければならないドキュメントが何なのか」をまず知ることが大切です。
実務で行っている業務はあくまでも過程であることを意識しなければなりません。
経理実務における最終成果物とは何か?
経理実務では、細かな数値管理から個々の仕訳処理まで行い、その結果試算表が作成され、決算書につながります。
そして最終的には、
・税務申告書
・計算書類等
・有価証券報告書(上場会社等のみ)
など
を作成することになります。
なぜ最終成果物を知らなければならないのか?
理由は、
●税務申告書の作成に必要な数値
●計算書類等の作成に必要な数値
●有価証券報告書の作成に必要な数値
が多数あるからです。
これらの必要な数値は、ただ決算書・試算表の数値を転記するだけでは足りません。
少なくとも残高の内訳を綺麗に把握することが必要で、そのほかにも次のような情報を経理実務の過程から取得してこなければなりません。
●税務申告書の作成に必要な数値
→別表作成にあたり必要な情報
→概況説明等の添付書類に必要な情報
●計算書類等の作成に必要な数値
→事業報告に必要な情報
→個別注記表の注記情報に必要な情報
→附属明細書に必要な情報
●有価証券報告書の作成に必要な数値
→経理の状況より前の情報に必要な情報
→経理の状況の注記情報に必要な情報
→附属明細書に必要な情報
これら必要な情報を効率的に得るために、一つの仕訳処理でも分解して記載した方が良い場合や、あとで集計しやすいように補助科目やタグ付けなどの工夫が必要となります。
また、会計処理の根拠となる管理帳票も後で利用する可能性が高いため、きちんと整備しておくことも重要となります。
そうした工夫は最終成果物の必要な情報が何なのかを理解していなければできないことであり、できるできないで経理実務の品質に差が出てきます。
フローとして経理実務の全体を把握できているか
社長一人従業員ゼロの会社でもない限り、経理実務で行って生み出された情報は、必ず実務担当者以外も目にすることになります。
・経理部内での職務分掌
・経営陣への報告
・外部のステークホルダーへの開示
など
したがって、これら他の誰かの目に触れることや情報を見る目的を実務担当者自らが理解し、自己の業務が右から左のただの作業になっていないか注意する必要があります。
経理部内での職務分掌を踏まえた注意点
自分がチェックする立場や、誰かが行った業務の結果を利用して違う業務を行う場合を想像してみてください。
例えば仕訳の摘要欄の記載が簡素で親切な内容になっていなかったり、チェックするための管理帳票がきちんと整理されなかったりしたらどうでしょう?
次の人のことを考えて自分の業務を行なっておかなければ、次の人の業務に負荷がかかります。
場合によっては、複数の人が何回も同じ調べごとをしなければならない状況も考えられます。
そのような非効率な業務は会社全体としても損失となりますので、各々の業務はフローの一部を切り取られていたとしても、業務フロー全体の把握をすることは全ての担当者に必要なことだと言えます。
経営陣への報告における注意点
経営陣への報告の趣旨は経営の意思決定に活用するための情報提供です。
会計帳簿そのまま見せるわけにもいきませんので、自社の経営陣がどのような情報を必要としているのか把握し、それに合致した報告資料を作成することが通常です。
その報告資料を作成するためにも、普段の業務と二度手間とならないよう1つの作業で2つのアウトプットができるようにするなどの工夫が必要ではないかと思います。
外部のステークホルダーへの開示
こちらについては、前段の最終成果物を知ることと同義です。
外部への開示とは、すなわち開示書類をもって会社が自らの主張を行なっているわけですから、そのための基礎数値をどれだけ丁寧に積み上げ管理できているかは重要です。
開示だけでなく、税務調査など外部機関からの調査が入ることもありますので、いつか誰かに見られることを意識することは大切です。
質問されたらすぐ答えられる準備や、無駄な質問をされないような準備をする
自分の業務は、後で誰かが見る情報となりますので見た人がすぐ理解できるような業務の仕方をするとともに、仮に質問されてもすぐに答えられるよう管理帳票などの整理はきちんと行うことが必要です。
まずは少なくとも、チェック者や第三者からの質問等に瞬時に答えられるよう、自分が処理した仕訳が試算表のどこに現れるのかを意識しておくのが良いと思います。
これについては、以前のブログで書いた「残高のチェックをする」ことにもつながりますので、そちらも参考にしていただければと思います。