会計帳簿から資金繰り表を作ってはいけない3つの理由とは??

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こんにちは、ひめのです。
今回は、会計帳簿から資金繰り表を作成することに対して自分の考えを書きたいと思います。

ここでいう会計帳簿とは、損益計算書と貸借対照表を作るために仕訳入力を行い作成された各種帳簿類のことを指しています。

この会計帳簿は会社の決算や税務申告に必ず必要なものですので、その情報をベースに資金繰り表を作った方がラクで効率的じゃないかと考えている人も多いのではないでしょうか。

実際「会計帳簿から資金繰り表も作成できます」と謳っている会計ソフトもありますので、それが普通だと考えるのが自然かもしれません。

しかし、会計帳簿から資金繰り表を作って資金を管理しようとすることは、ある意味非効率であまり有用性がないものと私は考えていて、会計帳簿から資金繰り表を作るというフローを推奨していません。

その理由について次に詳しく書いていきます。

会計帳簿から資金繰り表を作ってはいけない3つの理由

その① 管理の時間軸が違う

会計帳簿は過ぎ去った過去の売上高や利益を算出するために作成されるものです。

一方、資金繰り表は過去のお金の動きを見るためというよりは、「この先お金をどう回していこうか?」という未来のお金のやりくりについて管理するために作成するものです。

したがって、会計帳簿は主に過去の情報を見るためのものであるのに対し、資金繰り表は未来の情報を見るためのものであるため、それぞれ管理目的の時間軸が違っています

過去の情報をもとにした資金繰り表は古い情報となってしまい本来の目的で活かせなくなってしまいますので、会計帳簿から資金繰り表を作ってはいけない理由といえます。

その② 過去と未来を混同できない

その①で「資金繰り表」は未来の情報が必要ということを説明しました。

つまり、資金繰り表は過去情報と未来の情報を組み合わせたものであると経営に有用な情報となります。

会計帳簿から資金繰り表を作ることを前提とした場合、過去と未来を組み合わせた情報にするためには、会計帳簿内に未来の情報が入っていなければなりません。

しかし、会計帳簿は税務申告等で提出する決算書を作成するためのものですので、確定した過去の情報以外を入れてしまうと、正確な決算書の作成を妨げてしまう可能性があります。

また、未来の情報という意味では売掛金・未払金といった科目は未来の入金・支払ではあるものの、それは近い未来の「予定」でしかありません。

資金繰り表を経営で活かせるものにするためには数ヶ月や1年以上先の「予測」情報も加味することが必要です。

したがって、会計帳簿は「予定」は登録できても「予測」まで登録してしまうと、維持管理が非常の困難な代物となってしまいます。

その③ 簡単に作れない

資金繰り表は、経営層に近い人が自ら活用することもありますが、経営層には必ずしも会計に明るい人ばかりではありませんので、そのような人でも経営の意思決定上活用できる資金繰り表でなければなりません。

また、資金繰り表の作り方にルールはありませんので、利用者が使いやすい内容で作成することができ、簿記の知識も必要ありません

会計帳簿をベースに資金繰り表を作成する場合の流れは次のようなイメージになります。

1)処理結果から資金繰り表が出力できるよう設定

2)インプットは簿記の仕訳処理を行う

3)資金繰り表としてアウトプット

4)作成結果に未来の予測情報を付け足す

5)新たな取引事象について設定を見直す

みてわかるように会計や簿記に詳しくないと設定はできないし、数値のインプットも同じです。

アウトプットと別管理している予測情報を結合する作業は仕方がないとしても、新しい取引やイレギュラーな取引が出てくるたびに、資金繰り表のアウトプットのための設定を考えなければならないためメンテナンスも大変です。

資金繰りの情報は早く欲しいのに、会計帳簿から資金繰り表を作っていては正確に仕訳処理をしてから作成されるため時間がかかる上、数値のインプットは簿記の知識がある人でないと行えないため、簿記の知識を必要としない資金繰り表の作成が簿記の知識がないと作成できないものとなってしまいます。

したがって、会計帳簿から資金繰り表を作ろうとすると、簡単には作れないという結論に至ります。

資金繰り表の作成と管理はどうするべきか

答えとしては、会計帳簿の作成と切り離すか、資金繰り表の作成が数値インプットの入り口として資金繰り表から会計帳簿を作成するか、のどちらかであると考えます。

利用する人作成される過程利用シーン等を考えた場合、根本から数値の扱いを考え直す必要がでてきます。

数値の出どころは会計帳簿だけという固定概念をまず排除してより良い方法を考えるという発想が重要です。

資金繰り表は、作成することが目的ではなくそれを経営に活かすことです。資金繰りを管理するという目的経営に活かすという目的もっとフォーカスして、その目的達成するための最善の方法やツールを検討する必要があります。

この考え方については、大袈裟に言うと会計実務や経理業務を再定義するようなこととも言えますが、この点については別にブログを書きたいと思っています。