【まずはサラッと理解したい人必見!】改正リース会計基準の公開草案をざっくり解説します。

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2023年5月に、企業会計基準公開草案第73号「リースに関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第73号「リースに関する会計基準の適用指針(案)」(以下、公開草案)が公表され、8月にコメント募集が締め切られました。

昨今の会計基準の改正の中では比較的インパクトのあるものかと思いますので、会計界隈ではちょっとした話題にもなっています。

ただ、内容的には非常に難解な部分もありますので、「公開草案をそのまま全部読むのは大変」という方も多いと思います。

そこで、まずは全体像をサラッと理解したい人向けに、特に、現行の企業会計基準第 13 号「リース取引に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第 16 号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(以下、現行基準という。)との違いや重要なポイントについて、ざっくりとした解説を書きたいと思います。

この記事でイメージ感を掴んでから、気になった部分について、具体的に原文にアクセスして詳細を確認してもらえれば、効率的に理解を深められるのではないかなと思います。

なお、当該内容は公表されている公開草案を基に個人的見解を記載しておりますので、今後公表されている内容が変わる可能性があることについてご承知おきください。

定義等

1.適用範囲

適用範囲外とする4項目が明記されています。

適用範囲外項目は現行基準にはなかった点ですが、基本的にはIFRS第16号や収益認識に関する会計基準との整合性を図るために定められています。

2.定義

IFRS第16号との整合性を確保するために、定義に関する定めが変更されています。

リースに関する定義は下記のようになっています。

現行基準 →「リース取引とは・・・(省略)」

公開草案 →「リースとは・・・『原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分』」

その他、新設された定義も多くあり、定義付けがより明確になった印象です(原資産とは、使用権資産とは、等々)。

3.リースの識別

現行基準では定められていなかった「リースの識別」に関して定められています。

この定めにより、現行基準の適用では対象になっていなかった契約についてリースとして識別される可能性があります

リースの識別にあたってのステップは以下のとおりです。

① 資産が特定されているかどうかの判断
② 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断
  ・経済的利益に関する判断
  ・指図権に関する判断

4.リース期間

リース期間に関する定めについては、次のようになっています。

借手のリース期間

→ IFRS第16号と同様に解約不能期間+延長・解約オプション対象期間も加味することが定められています。

貸手のリース期間

→ 基本的に現行基準を踏襲しています。

会計処理・開示

5.借手の会計処理

ファイナンスリースか否かは問わず、また、所有権の移転の有無を問わず、使用権資産とリース負債を計上(原則オンバランス)することとされています。

また、リース料の構成に関しての定めが新設され、資産の償却方法は、原資産の所有権の移転の有無により異なります(償却方法については基本的に現行基準と同じ)。

リース期間に変更がある場合、及びリース料に変更がある場合には、リース負債の見直しが必要となります。

6.貸手の会計処理

分類等に関しては現行基準と同様の内容になっています。

会計処理に関しては、収益認識に関する会計基準との整合性の観点から「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」が廃止されています。

7.開示

借手のリース負債にかかる利息費用についての定めが新設され、貸手の収益計上にあたり区分表示又は注記の定めも新設されています。

注記項目についてはIFRS第16号との整合性が図られた内容となっています。

なお、重要性が乏しい場合は注記が省略できることとされています。

8.短期リース(借手)

短期リースの定義は12ヶ月以内と定義されており、オンバランスせず、リース料をリース期間にわたって定額法により費用計上できることとなっています。

支払ったリース料を費用計上できるのではなく、リース期間にわたって定額法で費用計上する点が要注意です。

9.少額リース(借手)

下記についてはリース料をリース期間にわたって定額法により費用計上できる定めとなっています。

・重要性が乏しい減価償却資産について、購入時にも費用処理を採用している場合
・事業上重要性の乏しいリースで、リース契約1権あたりのリース料が300万円以下又は原資産の価値が新品時におよそ5千米ドル以下のリース

10.再リース

再リースは日本特有の商慣行であり、IFRS第16号には定められない部分ですので、現行基準を踏襲しています。

借手は、リース開始日及び直近のリースの契約条件の変更の発効日において、再リース期間を借手のリース期間に含めないことを決定した場合は、再リースを当初のリースとは独立したリースとして会計処理を行うこととなっています。

11.セール・アンド・リースバック

セール・アンド・リースバックの会計処理については、IFRS第16号ではなくtopic842を参考にされています。

まず、「売手である借手が資産を買手である貸手に譲渡し、売手である借手が買手である貸手から当該資産をリース」と定義され、セール・アンド・リースバック取引が「売却に該当する場合」「売却に該当しない場合」で会計処理が異なります。

売却に該当しない場合は金融取引として会計処理し、売却に該当する場合は、取引の性質に応じて他の会計基準に従った処理か、金融取引としての会計処理かに分かれることとなります。

適用時期

12.適用時期

公開草案の最終基準公表から2年程度経過した4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用することが提案されています。

これを踏まえると、最短では2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用となることが想定されますが、現時点では時期は不明です。

コメント募集を受けて、公開草案から内容が変更される部分はあるかもしれませんが、多岐にわたって影響が出ることも想定されますので、今のうちから自社の会計処理について準備しておくことも必要かと思います。

おまけ

私が代表をしている株式会社HIFASでは、上記のような企業会計基準の影響を大きく受ける上場会社やIPO準備会社の支援をしています。

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