(経理実務のポイント)売掛金の管理がカオスになる原因とは??
こんにちは、ひめのです。
経理の実務の中で重要な業務の一つに「売掛金の管理」があります。
請求した代金を回収して未入金がないかを管理するものですが、簡単そうに見えて実は煩雑になりがちな業務です。
取引件数が多いと帳簿がカオスになってしまい、手のつけようがないくらいの状態になってしまうこともあります。
そこで今回は、売掛金の管理の実務について管理がカオスと化してしまう原因について書きたいと思います。
改めて・・・売掛金の管理とは??
まず、売掛金の管理とは具体的に何をする業務かを解説します。
売掛金の管理は、請求書を発行して売上を計上したものについて、入金期日までに入金があるかを取引先ごとに確認する管理業務です。
取引先が多くなると、比較的頻繁に口座情報を取得して入金の記録をとって売掛金が回収されたかどうかをチェックします。
その結果、入金期日までに入金がなかった取引先に対して督促を行い遅滞なく代金を回収できるように努めます。
商品の販売やサービスの提供により売上が計上されたとしても、その代金を回収できなければ事業の成果を得られたとは言えません。
代金を回収するまでをしっかりと管理しておかなければ未回収の売掛金が増えてしまい、会社の資金繰りにも影響しかねないため、売掛金の管理は疎かにせず、定期的に確認をするように心がけることが大切です。
売掛金の管理がカオスになる原因とは??
取引件数が多いと売掛金の管理が大変になり、帳簿がカオス状態となってしまうことになります。
なぜ、売掛金の管理がカオス状態となってしまうのか、いくつかの原因があります。
①会計帳簿の総勘定元帳、補助元帳では、履歴が追いづらい
②請求に対しての入金額が一致していないことにより実務が煩雑になる
③期日通りに入金されないことが増えると実務が煩雑となる
④会計ソフトの消し込み機能にはクセがあり使いづらく、あとの帳簿の確認に手間がかかる
①会計帳簿の総勘定元帳、補助元帳では、履歴が追いづらい
売上は会計ソフトに入力するので、売掛金に補助科目を設定して、補助元帳で残高を管理することになるのは自然なことです。
しかし、元帳といわれる総勘定元帳や補助元帳は貸借に数字が入って残高が増減していく帳票になっていますので、ある取引に対する入金の対応関係が分かりづらく、計上額が期日通りにきちっと入金され月末残高が月末に計上した金額と一致するようなシンプルな状況ではもんだいないですが、規則正しい数字の動きにならないと履歴が追いづらくとても確認しづらくなってします。
②請求に対しての入金額が一致していないことにより実務が煩雑になる
請求金額に対してその通りの金額が入金されれば良いですが、場合によっては振込間違いをしてきたり、後からの交渉により分割で入金してきたりということが起こり得ます。
計上と入金が1対1ではなくなると、未入金・過入金の管理が追加で発生してしまうだけでなく、それによって取引先に連絡するという手間が発生し、さらには、次の入金で調整するようなことになれば、調整の元をちゃんと履歴として把握しておかなければならず、管理が複雑になります。
例えば、過入金があった場合、次の入金で請求額より少なく入金してもらうこととなっていても、そのことを失念してしまっていて、入金が少ないことに対して調べることになってしまったり、取引先に再度確認してしまったりという無駄な作業が増えてしまいます。
計上額と不一致の入金が続くと補助元帳の残高もシンプルなものにはなりませんので、帳簿を見ても簡単には理解できなくなってしまいます。
③期日通りに入金されないことが増えると実務が煩雑となる
期日通りに入金がないと、取引先に督促をしなければならないため事務負担が増えます。
督促してすぐに入金してくれる場合はまだ良いですが、何ヶ月も滞納したり、溜まった分を数ヶ月分まとめて入金してきたりするケースがあると、入金管理する側の負担が増えます。
特に、何ヶ月も入金がない場合は、たいてい取引先から「いくら振り込めば良いですか?」と聞かれることが多く、期日通り入金してくれない取引先は支払いの管理がまともにできていないことが想定されます。
自社で余計な事務負担が増えないよう、未入金先への督促や問い合わせ等に対する対応をスムーズにできるような運用体制を構築しておくことが重要です。
④会計ソフトの消し込み機能にはクセがあり使いづらく、あとの帳簿の確認に手間がかかる
クラウド会計システムには請求書作成機能が備わっており、請求書を作成すると売上も自動で計上されるという便利な機能があります。
また、作成した請求書に対する入金を消し込んでいく機能もあり、こちらもシンプルな取引であれば非常に効率的に管理できる利点があります。
しかし、これら便利な機能には弊害もあります。
まず、請求書を作成すると売上が計上されるという仕組みですが、請求書の項目の中に売上高とは別の勘定科目で処理すべきもの(例えば立替金など)が入ってしまっているにもかかわらず、デフォルトの設定のまま作成してしまい、知らないうちに売上高としてとして計上してしまうことがあります。
会計に詳しくない人だけで運用していると、これらの本来処理すべきではない処理を知らず知らずのうちにやってしまい、あとで残高が合わなかったり変な残高になったりしてしまい、確認に時間がかかるというリスクがあります。
また、入金の消し込み機能ですが、一部入金や過入金の場合の処理が難しく、それらイレギュラーとなってしまったものは引き続き管理が必要になるにもかかわらず、その場で差額処理をしてしまうと、差額が独立して会計処理されてしまい、履歴として追いづらくなってしまいます。
さらに、入金に対して自動で推測消し込み候補を出してくれたりするのですが、注意深く処理しないと、同じ金額で違う取引先を消し込んでしまったりしますので、そうなると本来督促すべきではないところに督促してしまうことになってしまい、余計な手間が増えてしまいます。
したがって、クラウド会計システムの便利な機能を使うにしても、会計に詳しい人のサポートのもとで運用しなければ、思わぬところで予期しない会計処理が起こってしまい却って非効率な状況を生む可能性もあります。
あとがき
以上、売掛金の管理がカオスになってしまう原因についての解説でした。
売掛金の入金管理は誰でも理解できる単純なことではありますが、実際の実務はそんな簡単なものではありません。
実務担当者に対して、なんでそんな簡単なことに時間がかかるのか?と思う人もいますが、代金の回収は会社にとって非常に重要な業務である中で、管理自体もイレギュラーなことの対応で実際簡単なものではない上に、会計処理のこととも考えて整合取れるようにしておくことを考えると、管理の運用方法をしっかり構築した上でそれなりの時間をかけて丁寧に行わなければならない管理であると言えるのではないでしょうか。