(経理初心者向け)前払費用って何??わかりやすく解説します!
こんにちは、ひめのです。
今回は「前払費用」です。
前払費用は、BS(貸借対照表)に登場する科目ですが、この科目の特徴と経理実務上の注意点などを解説したいと思います。
前払費用って何??
「前払費用」とは文字通り先にお金を払って、あとからサービスの提供を受けるような場合に利用する科目です。
例えば次のような取引が前払費用に計上されます。
・保険の1年以上前払い
・所属する団体等の年会費
・利用するサービスの1年以上前払い
・家賃の1年以上前払い など・・・
前払いした方が総支払額が割引になる場合もあるため、1年ないしは複数年分を先払いするケースはよくあるかと思います。
キャッシュアウトはしますが、会計上は支払った時に全額を費用にするのではなく、契約期間やサービスの提供を受ける期間で按分して費用にします。
具体的な例をみてみましょう。
契約した事務所の火災保険が5年契約で500,000円だった場合、会計上はどのような処理になるでしょうか。
決算期:12月末
支払額:500,000円
支払日及び契約開始日:7月1日
保険料として費用計上される金額、前払費用の残高は、
×1年度
・・・保険料500,000÷5年÷12ヶ月×6ヶ月=50,000円、前払費用450,000円
×2年度〜×5年度
・・・保険料100,000円、前払費用350,000円⏩ 50,000円
×6年度
・・・保険料 残額50,000円、前払費用0円(残高なし)
という計上金額となります。
なお、キャッシュ・フローとしては支払った時のみ発生するので、それ以降のキャッシュ・フローには影響しません。
資金繰りの観点では、多額の前払いをする際は、総支払額が割り引かれるからといって安易に実行してしまうと、その後の資金繰りに困ることもあります。
また、年払いを継続するような場合は支払いのタイミングを失念しやすく、「予定に織り込んでいなかった」という事態となって慌てることにもなりかねません。
前払費用となる取引は金額が大きめになるので資金繰りの観点では注意が必要な取引と言えます。
経理実務上の注意点
次は、実務上の注意点を解説します。
実務上注意しなければならない点は、2年を超える前払いをした場合に費用化処理を忘れないようにする、ということです。
一度前払費用として計上してしまうと、その後はお金が動くわけではないため、会計上のみの処理となります。ちゃんと管理しておかないと「費用化の処理を忘れて決算を締めてしまった」なんてことになってしまいますので、長期にわたる前払費用は適切に管理をしなければなりません。
費用化の処理を忘れないようにするためには、別途管理シートを作成して管理するほか、残高試算表上の前払費用残高のチェックをすることで、失念を防ぐことができます。
前払費用の取引毎に補助科目を設定して残高をチェックすれば、年度末の残高が期首の残高から変わっていなものについて処理忘れの可能性があることを発見することができます。
ちなみに、2年以上にわたる前払費用はBS(貸借対照表)上、固定資産に長期前払費用として計上し、1年以内に費用化される分は流動資産の前払費用に振り替えますが、税務会計中心の中小企業ではそこまで厳密に処理しなくても問題はないと思います。
前払費用に資産性はある??
最後に、前払費用に関する資産性について考えたいと思います。
前払費用はBS(貸借対照表)の「資産」に計上されます。
デューデリジェンスを行う場合などで資産性が問題となるケースがありますが、その際は資産として計上している価値があるかどうかを検討しなければなりません。
資産性があるかどうかは様々な要因を検討することになりますが、例えば次のようなことに注意します。
・契約の内容
・会計処理の内容 など・・・
契約上、途中解約した場合は返金不可またはディスカウントして返金されるような場合は、その状況に合わせて評価を見直す必要があります。
また、会計処理の内容として、そもそも費用化すべきものが費用化されていない状況もあり得ますので、取引内容をひとつひとつ確認して処理の誤りがないかを確認することも行なっていきます。
以上が、前払費用の資産性に関する解説でした。
このように、会計処理の方法、資金繰りの管理上の取り扱い、デューデリジェンスでの考え方と、状況によって気をつける点が違ってくるということを知ってもらえると良いかなと思います。