【似て非なるもの】公認会計士と税理士を単純比較してみました

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こんにちは、ひめのです。
今回は、公認会計士と税理士についてオフィシャルの情報を単純比較してみました。

似たような資格と思われがちですが、この比較により実際には明確に双方に違いがあり魅力があることがわかると思います。

なお、これら比較情報は2021年10月3日時点で知りうる情報を基にしています。

その① 人数で比較してみた

まずは、それぞれの登録者数を比較してみました。

公認会計士 税理士

32,865名

(8月現在、日本公認会計士協会HPより)

79,696名

(8月現在、日本税理士会連合会HPより)

税理士の中に、約1万人ほど公認会計士で税理士登録している人が含まれていますので、その人数を考慮すると、税理士は公認会計士の倍以上登録者がいることがわかります。

その② 歴史で比較してみた

次に、それぞれの制度の成り立ちについて比較してみました。

 
公認会計士 税理士

公認会計士制度は、

昭和2年の「計理士法」に基づく計理士が始まりとされています。

1948年(昭23年)に証券取引法の導入と合わせて、同年に計理士法が廃止され新たに「公認会計士法」が制定されました。

参考:日本公認会計士協会 HPより

税理士制度は、

昭和17年に制定した税務代理士制度が源泉となっています。

戦後、申告納税制度が導入され、1950年(昭和25年)のシャウプ勧告に基づく税制改革を経て、1951年(昭和26年)に新たに税理士法が制定されました。

参考:日本税理士会連合会 HPより

公認会計士については、公認会計士法が制定された後、1951年に初の証券取引法に基づく公認会計士監査が開始されています。

次の使命にもありますが、公認会計士は証券市場における監査制度を担い、税理士は申告納税制度を踏まえた適切な納税義務の実現を担っていることが歴史からも垣間見えます。

その③ 使命で比較してみた

それでは次に、双方の立法上の使命について比較してみます。

 
公認会計士 税理士

公認会計士法 第1条

公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。

税理士法 第1条

税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。

 

公認会計士の使命について補足

認会計士は監査及び会計の専門家であり、独立した立場において業務を行うことで公正性と信頼性を確保し、監査証明という公共性の高い業務により国民経済全体の健全な発展に貢献することが使命とされています。
(参考:日本公認会計士協会HP)

税理士の使命について補足

税理士は暮らしのパートナーとしていつでも相談できる人々の身近な存在となり、公平な税負担により住みやすく豊かな暮らしを守ることを使命とされています。
(参考:日本税理士会連合会HP)

その④ 独占業務で比較してみた

公認会計士も税理士も独占業務があります。それぞれどのような独占業務があるか比較してみました。

 
公認会計士 税理士

公認会計士法第2条1項を抜粋

公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする。

 

税理士法第2条を抜粋1項を抜粋

税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第十条の四第二項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第四十九条の二第二項第十号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。

1 税務代理
2 税務書類の作成
3 税務相談

 

公認会計士は、いわゆる「監査証明業務」が法的な独占業務となっており、法定監査は公認会計士又は監査法人でなければ行えない業務です。法律に定めがなくても他人の求めに応じ報酬を得て第2条第1項に規定する業務を営んではならない(公認会計士法第47条の2)とされています。

税理士は、税務代理・税務書類の作成・税務相談が独占業務となっており、税理士でない者がこれを行ってはならないとされています(税理士法第52条)。

双方ともに、専門性が高い故に独占的に行える業務があり、これが資格を取ると職に困らないと言われてきた所以ではないかと思います。

その⑤ 試験制度で比較してみた

最後に、試験制度について比較してみたいと思います。

試験制度を見てみると、それぞれの資格で求められている資質がわかり、それぞれの特徴が比較できるので面白いかもしれません。

 
公認会計士 税理士

【試験概要と試験科目】(参考:R3年度)

短答式と論文式の二段階の試験となっている。
短答式は年2回、論文式は年1回で、短答式の合格者は2年間短答式試験を免除される。
論文式試験は科目合格制があり、科目合格した場合は2年間その科目が免除される。

なお、公認会計士として登録するためには、公認会計士試験を合格した後、2年間の実務経験と一般財団法人会計教育研修機構が実施する実務補習を受け、日本公認会計士協会による修了考査に合格しなければならない

短答式試験(1日間)
・企業法(60分)
・管理会計論(60分)
・監査論(60分)
・財務会計論(120分)
論文式試験(3日間)
・監査論(120分)
・租税法(120分)
・会計学(120分)
・会計学(180分)
・企業法(120分)
・選択科目※(120分)
※(経営学、経済学、民法、統計学から一つ)

【試験概要と試験科目】(参考:R3年度)

会計学に属する科目の2科目と税法に属する科目のうち受験者の選択する3科目(所得税法又は法人税法のどちらか1科目は必ず選択)の計5科目。
税理士試験は科目合格制となっており、一度に5科目を受験する必要はなく、科目合格の期限もない。

会計に属する科目
・簿記論(120分)
・財務諸表論(120分)
租税に属する科目
・所得税法(120分)
・法人税法(120分)
・相続税法(120分)
・消費税法(120分)
・酒税法(120分)
・国税徴収法(120分)
・住民税又は事業税
・固定資産税(120分)

3日間行われ、消費税法と酒税は同じ日時に行われる。

すごくラフな言い方をすると、公認会計士試験は、会計・監査を軸に企業を取り巻く幅広い知識が求めれられるのに対し、税理士試験は会計と税務に振り切っているのがわかります。

また、双方で科目的に重なってそうな「会計」と「租税」ですが、それぞれの資格の特性もあり、「会計」については公認会計士試験ではかなり分厚い内容となっている一方、「租税」については税理士試験の方が圧倒的に分厚い内容となっています。

どちらの試験を目指すにしても、資格者として登録するまでには相応の長い道のりがあることが試験概要から伺えます。

まとめ 個人的な感想

公認会計士と税理士とでは、双方分野が重なる部分もありますが、根本的な存在意義としては似て非なるものであると思います。

会計の専門家(プロフェッショナル)と一口に言われることもありますが、それぞれの資格上の立場があるため、会計の専門家といってもアプローチが違いますし、理解の深さや捉え方も違ってきます。

ここではあまり詳しく書きませんが、どちらも膨大な量の知識と実務上の経験を必要としなければならない職種です。

その中で一つ言えるのは、それぞれ明確な使命がありその使命を全うすべく各々が日々研磨して、クライアントや利害関係者のために努力していかなければならない、という点では共通しているのではないかなと思います。